
「お医者さんへ行って、お薬もらわなければ治らない」、何十年も前には年配者から良く聞く言葉でした。
肺炎
たぶん、終戦直後の1947年から日本でも使用が始まった、抗生物質(ペニシリン等)の絶大な効力に対する、信仰に近い感情が言わせた言葉だったのでしょう。
確かに、当時相当致死率が高かった肺炎や各種の細菌感染症(破傷風なども含む)に対して、体力とか抵抗力といったものに左右されず絶大な効果を発揮しました。
それは、一部で広く信じられている「玄米食信仰」と通じるものがあります。
こういうことを書くと、玄米食推奨派の方々から厳しいお叱りを受けることがあるのですが、玄米食が悪いとか、効かないとか言っているわけではなくて、巷間言われているような絶大な、絶対的な効果を期待すべきではない、ということを申し上げているだけですから、その点は誤解しないでいただきたいと思います。
さて、現在でも、耐性菌による肺炎を起すとなかなか治療は困難ですが、最近の新型コロナウィルス関連のニュースでよく紹介される、各種呼吸補助装置のおかげで、そう簡単に生命を落とすことはなくなりました。
現在でも、なお肺炎は、死因として第4位となっていますが、それは、感染症以外の他の疾病(実際は主として老衰)悪化の過程として出現した肺炎であって、終戦直後の単純な、例えば単に、まだ若かったのに風邪をこじらせて死んでしまった、というのとはいささか事情が異なります。
もちろん巷間危惧されている「医療崩壊」状態になってしまえば、同じことが起こることになります。
そういう事情ですから、歌舞伎役者を登場させてテレビ宣伝をし、国の助成付きで接種を推奨していた「肺炎球菌ワクチン」がいくら普及したところで、死亡原因としての肺炎の順位が下がるということはほとんど期待できません。
肺炎の原因は肺炎球菌だけではありませんし、肺炎球菌と言っても、現在時点でも90種類以上が発見されているのだそうで、全タイプの肺炎球菌に有効なワクチンなどは存在しないのだそうです。
言うまでもありませんが、「肺炎球菌ワクチン」を接種していたとしても、新型コロナウィルスによる肺炎にはまったく無力です。
テレビコマーシャルでは、高齢者ほど必要といったように思い込ませるような宣伝内容となっていますが、高齢者で一番多いとされる誤嚥性肺炎にはまったくと言って良いほど効果はないとのことです。
ワクチン製造元
ちょっと横道にそれますが、日本における、肺炎球菌ワクチン製造はMSD1社が独占しています。
「MSD」とは、メルク、シャープ&ドーム社、俗にメルクと呼ばれている巨大製薬会社の、米国法人の頭文字からとった社名で、同社の子会社である日本法人です。
悪名高き子宮頸がんワクチンの製造販売元でもあります。
日本では「メルク」という知名度の高い名称をあえて使わずに、「MSD」という出所不明の社名を名乗っているということは、少なくとも日本においては、良いイメージをもたれていない会社である、という自覚があるのかもしれません。
肺炎球菌ワクチンを打ちましょう、というTVコマーシャルのスポンサーは、政府広報でも公益社団法人ACジャパン(旧公共広告機構)でもなく、MSD社です。
こういうことを書いてしまうと、いろいろと問題になりかねないのですが、子宮頸がんワクチンの国による助成の法制化を推進したのは、最大勢力ではない某与党政党でしたし、そのワクチンの製造元2社のうちの1社はやはりMSD社です。
もう1社は「GSK」(グラクソ・スミスクライン社)ですが、MSD社製のほうが対応変異ウィルスの種類が多く、臨床的には多く使われるであろう製剤となっています。
ひょっとしたら、これも?と思って調べてみましたら、肺炎球菌ワクチンの公費助成法案も、某政党が実績として党広報に掲載していました。
普通に考えれば特定業者との癒着を疑われかねないような政治活動、といわれてしまう可能性が高いのではないか?と言う人がいるかもしれない、という感想を持つ人がいても不思議ではないかもしれません。
相手が相手だけに、非常に慎重な物言いをする人が多いのではないかと思います。私も含めて。
治療薬と予防薬と症状軽減薬
普通「くすり」と言えば治療薬というように考えます。つまり病気を治してくれる、解決してくれる医薬品、という認識です。
「予防薬」というのは、主として「ワクチン」ということになりますが、放射性物質関連事故の時に飲む「ヨード剤」も予防薬ということになります。
ワクチンは、無毒化あるいは弱毒化させた細菌やウィルスの変異種を、注射や経口接種によって人為的に感染させ、本物に体内に侵入されても増殖を許さないように、その病原体に対する抗体造りを学習させておくという薬理作用です。
ヨード剤は、有害な放射線(β線)を1500万年以上放射し続けるヨウ素129等(主として。自然界にはほとんど存在しない、実質的には原子炉で生成される人工放射性物質物質)が、甲状腺に蓄積されると甲状腺がんの原因になるので、蓄積してしまう前に甲状腺を放射性同位体でないヨウ素(ヨウ素58=放射能を出さない普通のヨウ素)で満たしておくという作用です。これも明確な予防薬です。
「治療」とは、本来『病気や怪我を治すこと』という意味ですから、抗生剤や抗ウィルス薬だけ、つまり、病気の根源的な原因(細菌等)を直接叩く、というか排除する作用の医薬品に限定されるべきなのですが、実際には意味を広げて『病気を治癒させたり、症状を軽快させるための行為』というのが一般的な解釈となってしまいました。
条文が記載された法律名は不明(医師法、医療法等?)ですが、ある辞書によると『医師が患者の症状に対して行う行為』と規定している法律があるとされています。
つまり、治療という言葉の意味は、本来の『治すこと』から、『治すこと&症状を軽減させる行為』あるいは、実際に有効であるかどうかは別として、それを改善しようという意図で行うのであれば、今日ではすべて「治療」と呼んでも差し支えない、というように解釈が拡大されてきたようです。
当たり前と言えば当たり前のことですが、医学、薬学界の方が、医薬品に対して正確な評価をしているということです。
本来の『治療』や『予防』は、極めて限定的な状況でしか成立せず、現在の『治療』のほとんどは、「症状を軽快させるための行為」でしかない、あるいはそういうつもりで処方、投与はしているが、有効かどうかもわからない、といったことが現実であるということを知る必要があります。
症状軽減薬
この用語は、一般的に使われることはありませんで、私の造語と言えば造語です。薬学上は存在しない言葉ですが、あえて用いて医薬品の役割を説明していきたいと考えたからです。
これは、症状を軽減させるための医薬品という意味なのですが、例えば、発熱という症状を軽減させるための薬品(解熱剤)であったり、重要な外せない仕事などの際に下痢を止める薬品(止瀉薬)などがあげられます。
西式健康法の基本的且つもっとも重要な『症状即療法』という考え方からすれば、それぞれ最悪、誤った医療の代表的なものですが、受験日であるとか、テレビ出演とか、重要なプレゼンテーションをしなければいけない、といった状況では使用もやむを得ないことはあります。
多くの方は、「でも、それらは、一般的な薬屋さんでも購入可能な一般売薬のことでしょ?お医者様が出してくれるお薬は違うでしょう?」と、いったように考える方が多いかと思いますので、もう少し話しを進めましょう。
降圧薬
血圧を下げるための薬品であり、今日ではもっとも健康に悪影響を与えると考えられている、高血圧を治療?するための医薬品です。
しかし、その作用は、症状を軽減(と言っても、高血圧による不快な自覚症状はありません)するための典型的な「症状軽減薬」に過ぎません。
そういう意味では、実は症状改善ですらなく、計測データを低下させる作用しかありません。
神経の働きを阻害して、本能の指示よりも命令が伝わりにくくして血管の収縮力を弱める作用のα遮断薬、β遮断薬。
血管を収縮させる直接の命令物質の合成を阻害するACE阻害薬。
薬理作用としてはACE阻害薬とは異なりますが、別な方法でその命令伝達物質の合成を妨げる薬剤である、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬。
かつては、日本においては圧倒的に主力であった、カルシウム拮抗薬。このカルシウム拮抗薬は、筋肉が収縮する基本的な仕組みである、カルシウムイオンの筋肉細胞への出入りを邪魔して、やはり血管の収縮量を本能の指令よりも弱めるという作用です。
また、複数の降圧薬を処方する場合には、処方されることが多い利尿剤も降圧薬として用いられます。
これは、体内の水分を強制的に排出させることによって、血液量総量を減じ、結果的に血管内の血液量を減らす、つまり、タイヤの空気を抜いて圧力を下げるのと同じ作用です。(血圧に関する解説はブログ021,022を参照してください)
ただし、血液量が多すぎて、問題になっている人など、存在するわけもありませんから、これも、ただただデータを改善するといった作用でしかありません。
むしろ水分不足になるようにしているわけですから、そちらが心配です。
それらの薬剤に共通していることは、薬理作用を有する成分を体内入れて、本能の指令とは異なる状態に導く、ということです。
もちろん、本能の指令が常に必ずベストとは限りませんから、自律神経の明らかな異常であるとか、何らかの有害物質を摂取してしまったような場合には、こういった薬剤治療は有効ということにはなります。
しかしながら、それは一時的な異状状態の是正に限定すべきであり、一生飲み続けなければならないとされる医薬品というのは、本来あってはならないことです。
また、薬剤は状況のいかんを問わず、一定の作用を生じさせてしまいます。ときには、血圧を下げすぎてしまうことが多々ある、ということは他の項ブログでも述べました。
高脂血症治療薬
中性脂肪値、コレステロール値が高いときに処方される医薬品です。多くの方はご承知のこととは思いますが、コレステロールには「悪玉」と「善玉」があって、総コレステロー値とLDLコレステロール(悪玉)値が高いと、薬剤を処方されます。
もちろん、現代医学においても高脂血症の傾向がある方には、まず「食事療法」を薦めはするのですが、なにぶんブログ26「栄養学は科学?」で述べましたように、科学的根拠自体に大いに疑問がある栄養学の言うことですから、ほとんどの人が薬剤を使うようになります。医師も強く勧めますし。
同じレベルの熱意で、食事に関してもっと強く薦めて欲しいものとは思うのですが、何分、業界の不文律である医食(養)分業の掟によって、大病院では直接医師の見解を聞くことはできません。
さて、この高脂血症治療薬で圧倒的に処方されているのは、今日でも「スタチン系」と呼ばれる薬剤群であると思われます。
スタチン系の薬剤は、肝臓におけるコレステロール合成を、強力に低下させる酵素阻害薬ですから、血中コレステロール値は、ほぼ確実に下がります。
しかし、それで、実際にコレステロール値等の異状によって生じるとされている、各種疾病、心筋梗塞、脳梗塞の発症率や死亡率が著しく減少しているのかと言うと、明確にデータに反映されているような事実はありません。
いくらかでも、有効であるとするデータがあるなら、それは患者が行った食事調整や運動などによる効果であると考えるべきでしょう。
なぜなら、薬を飲み始めたんだから、これからは安心して、今まで以上に脂っこい食事や、ご飯も大盛り食べるようにした、という人は一人も居ないと思われます。
スタチンの作用からすれば、そういう無茶なことをしても確実にコレステロール値は下がってくるはずですが、「この薬さえ飲めば、どんなものでも腹いっぱい食べて良いよ」という医師、医療関係者は皆無でしょう。医療の矛盾と言えば矛盾です。
なお、コレステロール値については、ここ数年、目まぐるしく定説?が変化しています。
コレステロールが問題になり始めた頃は、コレステロールの摂り過ぎは非常に良くない。鶏卵は一日最大でも2個以下といったように言われてました。
それが、血中を流れているコレステロールは、すべて自分の肝臓で合成したものであって、食材に含まれるコレステロールが、直接血中に溶け込むわけではないから、食材中のコレステロール値はまったく無関係、毎日玉子を10個食べたとしても何ら問題はない、と変わりました。
それが、最近になって、また、食材中のコレステロール値は制限する必要がある、と変わってきたのです。
たまたま、何かの機会にどれかの情報を知って実践しているような人にとっては、情報の変遷は関係なく、それぞれの正しいと思っている情報に従っているだけですから混乱はありませんが、常に新しい情報を追っている方々にとっては、目を白黒させていることでしょう。
最終的な正解は誰にも判らないわけですが、常識の範囲の食生活を心がけていれば過不足は生じないようになっています。
例えば、『体に良い』という思い込みにって、無理して毎日、生玉子を5個も6個も一気飲みしているような人は、明らかに常識の範囲を逸脱していると言えます。
鶏卵を大好きで、飲みたくて飲んでいるわけではなくて、『体に良い』という思い込みがそうさせているだけでしょう。
まだまだ、薬についてはお話したいことがたくさんありますが、本稿では、最後に漢方薬についての見解を述べて終えたいと思います。
漢方薬
「漢方薬」というと多くの方々が、副作用がない、安全といったイメージを持っているようですが、これは思い違いです。
漢方薬のすべてが植物由来ではありません、その多くは植物です。
なんとなく、植物の方が体に優しいといったイメージがありますが、戦う手段を持たない植物は、いろいろと食べられないための工夫がされています。昆虫にとっての毒素成分や動物に消化されにくい繊維組織もそうです。
各々の縮物が持つそれら成分の存在理由はそれぞれのようですが、植物の中には、動物が体内で合成している酵素等の成分に類似した成分を、たまたま有している場合があります。
解りやすい例をあげれば、大根に含まれるジアスターゼ(アミラーゼ)です。
ジアスターゼは消化薬として用いられます。それでは、なぜ、ダイコンの根が多量のアミラーゼを含有しているのかというと、以下のような理由であると考えられているのだそうです。
ダイコンは、葉で作ったでんぷんを根に多量に蓄えて、それを結実時のエネルギー源として利用するのだが、動物と同様、でんぷんのままではエネルギーとして利用できないので、同時にでんぷんをブドウ糖に分解するアミラーゼも持っている、と考えられているのだそうです。
また、アミラーゼは植物の液胞中に存在していて、通常の状態ではでんぷん質とは接触していないので、どちらもそのままですが、大根おろしにすると液胞が破れてアミラーゼが作用し、ダイコン中のでんぷんの分解が始まるのだそうです。
ジアスターゼはヒトも持っているでんぷん分解酵素(ブログ14「酵素って何?」をご参照ください)ですから、ヒトの消化管のなかでも酵素として働きます。
異生物のたんぱく質(酵素も含む)は、そのままでは摂取した動物の血中に入ることはありませんから(酵素としての働きをしないように、アミノ酸等に分解してから吸収する)、
同じ植物中の薬剤原料として知られている「ジギタリス」(現在は合成しています)は性質、作用が異なります。
毒草として知られる「ジギタリス」は、強心剤の「ジゴキシン」等の原料として利用されていましたが、この成分は「強心配糖体」と呼ばれます。
「配糖体」とは何かと言いますと、英語では「glycoside」(グルコシド)という名称が付いていますが、基本的には『糖がグリコシド結合により様々な原子団と結合した化合物の総称』(日本版Wikipediaより)となっています。
配糖体は、分子量がたんぱく質と比較して桁違いに小さいので、消化管から吸収され、そのまま血中にも入りますから、経口摂取でもいろいろと作用をなします。
もともと生体が合成している命令物質(ホルモン様物質)と、分子構造が酷似(あるいはまったく同じ)していると、本能は命令していないにもかかわらず、生化学反応が生じてしまうことがある、という性質を利用しています。
ジアスターゼもジギタリスも、最近合成された新薬ではなく、東西で古来から利用されてきた植物由来物質です。
つまり、漢方薬というのは自然物質中に存在する、動物の生化学反応等を起させる成分を、不純物がたくさん混ざったまま利用しているということです。
一方、近代薬のほとんどは、そういった何某かの作用のある植物の成分のなかから、何が作用しているのかを見つけて、その成分の作用だけを利用する、というものが主力です。
言い換えれば、必要成分のみを抽出したり、酵素反応を利用して人工的に合成して、不純物をなくしたものが、多くの近代西洋薬であると言えます。
つまり、漢方薬というのは不純物の方が圧倒的に多いから、作用も弱いし、そのおかげで強い副作用も現われにくい、ということです。
漢方薬が安全とは言い切れないということは知っておいてください。
Comment On Facebook