
ワーファリン復活 最終話 考察30
『睡眠時無呼吸症と心房細動』という副題を付けて、ワーファリン復活に対する問題提起をしてきましたが、肝心な血栓発生を防ぐにはどうしたら良いのか?ということについては述べておりませんでしたので、今回はその対策法について論述します。
前回までの内容を簡単におさらいしますと、左心耳内血栓を作る原因となるとされている『心房細動』は、睡眠時無呼吸症を伴うことが多いということ。
それは、睡眠時無呼吸症によって肺の収縮拡大が一時的とはいえ停止し、肺静脈内で血液が滞ってしまった結果血栓が発生しやすくなると考えられること。
生じた血栓をそのまま流すと、動脈血管が細くなったところで、詰まってしまうことがありますから、左心を通過、経由する血栓を動脈血管(大動脈弓)に流さない、つまり、血栓による塞栓症を防ぐのが左心耳の役割ではないのか?
つまり、血栓キャッチャ―として存在するのが『左心耳』ではないのか?という仮説を私は論じてきたわけです。
そういった、問題を解決するための可能性を探る一助として、ラフな計算をしてみようと思ったのですが、左心室と左心房の容量差に関しても、調べるのにちょっと苦労しましたし、肺静脈の有効内容積、個体における最大量と最少量の差(収縮、拡張時の容積差)については、未だに判明しません。
具体的な数値だけでなくて、容積差が収縮時と拡張時で生じるのかどうかさえ判明しないのです。
つまり、肺大静脈がどの程度の弾力性を有するのか?など、全く記述がないし、血栓発症の機序さえ、きちんとは検討していないようなのです。
静脈であるから、四肢の静脈血管同様、自在に容積を変えることが出来るものであるのか?
そうは言っても、完全にペシャンコに潰れてしまうほどの柔軟性を持っているとは、とても考えられませんし、逆に、まったく、拡張することもないということはもっと考えられないことです。
心臓による吸引ポンプ作用が生じているはずですから、弾力は有するものの潰れてしまうことはない構造であると考えられます。
機械屋、土木屋ならどうする?
前回も述べたかと思いますが、航空機工学や高度な船舶工学であれば、精巧で柔軟なプラスティック製の模型を製作し、血液と同様の粘性を有する液体を流して、さらには各所に糸状の吹き流しを設置し、細かく流体の流れを観察して結論を出します。
要素が複雑すぎて、計算で求めきれない場合には、実物に極めて近い模型を製作し、目視確認あるいは映像確認をする以外の方法はないはずなのですが、医学の世界では、まったくそういった工夫も努力もしていないようです。
たまたま、左心耳に血栓が溜まっている映像を発見すると、そこが発生場所だと決め込んで、すでにご紹介済みの左心耳閉鎖術であるとか、すでに左心耳内にできてしまっている血栓を溶解する効果はないが、新規の血栓形成は防げるはず(かもしれない)、ということで『ワーファリン』という、はっきり言って恐ろしい薬剤を処方しています。
継続検査の結果、ワーファリンを服用させても血栓がすでに生じてしまった左心耳内血栓は小さくもならないし、数も減っていないから、血栓を溶解する効果はないけど、新規発生は防止する、ではなくて、そうであって欲しい、といった感じで、ほとんど根拠なく処方をしています。
その結果、出血性の事象で死亡してしまうケースは相当増加しているのではないかと考えられるのですが、循環器内科、あるいは心臓外科という限定された分野では、自分の担当する患者さんが、仮に交通事故等によって硬膜下血種などで亡くなった場合でも、死亡時の情報が入手できることは極めて稀です。
「あれ、○×さんしばらく見えてないねぇ、薬まだあるかのかなぁ?」と主任看護師に尋ねたら、「〇×さん先月交通事故で亡くなったそうです。ご家族からさっき連絡がありました」ということになるだけで、ご自分の処方した薬が死亡原因になっている可能性などに、思いが至ることはほぼないでしょう。
聞くところによりますと、通常の採血程度でも静脈血管の採血用注射針を刺した穴からの出血は、5分以上も停まらないとのことです。
ワーファリン等の薬剤不使用者であれば、採血部位を普通1分程度脱脂綿等で圧迫止血し、その後絆創膏様のテープを貼っておけば、その絆創膏に小さな血痕が付いた程度の状態で、出血は完全に止まります。
ところが、前述の通り、ワーファリン等の血液サラサラ薬を服用していると、出血は5分以上続きますから、採血部位に大きな脱脂綿等を当て、それをさらに包帯等でしっかりと7固定する必要があるのだそうです。
それでも、装着の仕方が甘い状態ですと、手を下に垂らしていた場合には、血液が流れ出てきてしまうことも珍しくないとのことです。
くどいようですが、この血液凝固を阻害する作用は、脳挫傷等を起こした場合、つまり頭を強打して脳の血管から出血を起こした場合には、ごくごくわずかな、小さな損傷であっても確実に大事に至る、ということです。
この現象は、起きてしまうことがあるのではなく、確実に起きてしまいますから、血液の凝固を遅らせる薬剤(抗凝固剤、抗血小板剤)を服用している人は、絶対に頭部強打をしてはいけません、禁忌です。
と、申し上げたいところなのですが、それが予測できれば誰も苦労はしません。
効果が必ずしも確かでない、どころか抗血小板剤の代表である『バイアスピリン』は消化管出血がある場合、その出血リスクを考慮すると服用メリットはない、と大規模な医学統計調査ですでに結論が出ております。
これもどこかで記述いたしましたが、その数字には脳の外傷性出血によるリスクはカウントされていませんから、総合的に判断した場合には、何処から見ても服用メリットなし、ということになります。
「血液をサラサラにするお薬も出しておきますからねぇ~」という医師の甘言に惑わされないようにする必要があります。
さて、ここからが今回の本題です。まず、私は肺の静脈血管内での発生を疑っている訳ですが、エコノミークラス症候群における血栓発生場所である、下肢静脈とは血液の推定滞留時間が非常に異なります。
もう少し関連性を追求すると
下肢静脈血栓症の場合には、少なくとも数十分間は、高低差のある状態、つまりほとんどは座位、椅子に腰かけた状態で、少なくとも脚の筋肉は微動だにしないといった、条件が必要ですが、肺の場合にはどんなに長くても呼吸が停止する時間は1分間程度とされています。通常は10秒程度のことが多いとされています。
前述のように、どの程度の呼吸停止が生じれば血栓が生じる可能性が出てくるのかといったようなことを、ラフな計算で求めようとしても、基礎数字が全く揃いませんから手も足も出ない、ということはすでに述べました。
こういった基礎数値を調べることなしに、大学のゼミで発表などしたら、通常の学問分野、とくに工学系であれば、「オマエ答えだす気がないだろ、全然やる気ないだろ」と指導教授に怒鳴りつけられるレベルのことです。
そのくらい調べてから論文書けよ、というレベルのことなのですが、医学界では屁の河童です。
薬剤や医療機器の効果を比較するだけの論文が主流であって、基礎的な物理学的要素が欠けていても、全く問題にもされない、という恐ろしく前近代的な学問分野なのです。
地震学の分野では、古文書の解読が主流である地震学者と地球物理学に基づく地震学者が存在します。
地震学では二つのアプローチルートが存在しますから、徐々に地球物理学派が主流になりつつありますが、医学界にはそのような傍流(本当はこちらが本流であるべきであるが)が全く存在しませんから、製薬会社の思うがままに操られてしまいます。
製薬会社の研究員は、化学、生化学に通じていますから、学問的基礎レベルが著しく低い臨床系の医師を説得(騙す?)することなど、赤子の手をひねる様なものでしょう。
睡眠時無呼吸症の防止について
まず、睡眠時無呼吸症を『病気』と捉えるべきか?ということを考えなければなりません。
すべての生理学書に記載されている内容ですが、血液循環の補助システムのひとつとして『呼吸ポンプ作用』について記述があります。
呼吸による胸郭の拡大、収縮が、吸引ポンプの作用を生じさせるという考え方です。
現代生理学ではだれも疑問を唱えることのない定説となっていますが、西式側から言わせていただけば、胸郭の拡張、収縮による物理的ポンプ作用というより、肺胞からの水蒸気の旺盛な蒸散による『蒸散作用』の方がずっと大きいはずであると考えています。
植物や他の肺臓を有する動物とも共通した作用ということになります。
つまり、私自身、完全に納得している理論ではありませんが、一応そういうことになっているということをお伝えしています。
そういう観点から、睡眠時無呼吸症を単なる自律神経の不具合、ということで片づけてしまって良いものかどうか、ということも検討しなければなりません。
循環血液量と心臓通過血液量の不一致が生じれば、当然どこかで調整が必要になりますが、心臓はその制御システム上数秒間の停止すらする機能はありません。
一方、呼吸器系と言いますか、蒸散による末梢吸引系(これは西式独自の考えではありますが)の方は、かなり自由にコントロール可能であり、多少不規則な作動をさせたところで直ちに生命にかかわることがありません。
何らかの方法で全身血液循環の調整が必要な場合、心臓の時間当たり拍動数は多回数でも小回数でも、変動幅にはそれなりの限界がありますから、呼吸回数や体感温度を調整して、水分の蒸散量を調整するということが考えられる訳です。
呼吸を止めるということは、肺臓による血液吸引量を減じて肺内、より限定するならば、肺静脈内への血液流入を減じて、左心に過負荷がかからないように調整しているのではないか?ということです。
全身細胞の血液要求量が減じているのに、過大な血液が心室内に流入してしまうことを防ぐために、肺静脈側で供給量を制限もしくは適正量にコントロールするための手段、といった考えは成立しないか?ということを申し上げている訳です。
ここで述べている、静脈血管系の過大な血液、肺臓における吸引力を減じてでも心臓への流入を減らしたい過剰な血液成分(水分)の由来は?ということになる訳ですが、これは、浮腫として下半身に貯留した細胞間液(間質液)が、就寝後、重力の影響を受け無くなったために静脈血管の血流量を増加させたから、ということに尽きると思います。
CPAP(シーパップ=強制呼吸補助装置)療法を受ければ、呼吸は安定しますし、症状としての心房細動は多くの場合、治まりますが、それで万事めでたし、めでたしとはならないのではないか?ということも併せて申し上げています。
人工呼吸器として、強制的呼吸をさせてくれますから、少なくとも肺静脈内における血栓は非常に生じにくくなると考えられますし、血栓が生じなければ、心房細動という血栓捕捉のための不自然な作動も起こらないはずです。
左心耳内部に血栓を捕捉、引き留めておく必要もなくなりますから、結果として『血栓キャッチャ―』機能を作動させる必要が無くなる、ということであり、結果的に心房細動も治まるという理屈です。
しかし、一方で、全身血液循環において動脈系と静脈系の流量のアンバランスを調整することは十分に出来なくなってしまいます。
これは、直ちに生命にかかわるという訳ではありませんが、心臓の負担を軽減させようとする、血流量調整機能を低下させることになりますから、心臓の負荷、負担が増えるとういうことになるはずです。
実際は、心臓に対する血液供給過剰状態ということになりますから、心室内圧の過大な上昇であるとか、血圧の上昇(早朝高血圧の原因か?)といった現象を引き起こす可能性があります。
また、大動脈解離を発症する遺伝的な要素を有する方であれば、その発症を早め、重篤化させてしまうことが懸念されます。
常々申し上げていることですが、数百万年あるいはそれ以上に及ぶ生存競争を勝ち抜いてきた生物の、本能から発せられる指令が生存本能に反する、ということは、ごく一部の特殊な遺伝性疾患を除けば存在しないと考えるべきです。
ではどうするのか?
浮腫みが原因なら、水分摂取を控えよう、というのは最悪の選択です。
もともと、単純な生存本能に従って生きてさえいれば、過剰な浮腫など生じない構造を我々人類は与えられています。
もちろん、生活も基本的に原始時代の生活を模していれば土肥野が前提であって、自動車も家電製品も基本的には使わないということが前提となります。
それでも、近代社会でそれなりに充足した生活を、自分のため、家族のために営んでいきたいということになれば、生物としての設計に見合っていない生活を改めるか、短時間で浮腫みを解消する方法を実施するしかありません。
重力を逆向きに作用させて、手足を挙上し、微振動させることによって迅速に浮腫みの水分を循環系に戻すための、毛管運動であるとか、手首足首の上下運動を実施します。
運動をすれば心拍数も上昇し、浮腫みの過大な水分が循環系に復帰しても、心臓に対して負担になることはありませんし、運動後1~2時間も経過すれば、過剰な水分は尿となって排泄されます。
就寝後(体を横たえた姿勢)であっても、急激に肺臓への血流量が増加することにはなりませんから、呼吸の一時停止であるとか、それによって血栓が生じるリスクを防止すると考えられる、心房細動という症状も減らせることになるはずです。
なお、血栓が生じる原因は単純に血流が滞りがちというだけでは、十分な説明にはなっていません。
もし、それだけが血栓発生の原因であるとするなら、脳梗塞(脳血栓症)を始め、血栓による各種塞栓症を発症する人の数は、現在の数十倍、数百倍になっているはずです。
血液が凝固しやすい遺伝的特質(条件によっては生存率の向上につながる)と、食事の内容も大いに関係していると考えられますから、少食ということも極めて重要な要素である可能性が高いということも言えます。
それにしても、浮腫ませたまま就寝するということのリスクは、想像以上に大きいということは言えるかと思います。
また、それほど多い事例ではないはずですが、自律神経の異常でそのような症状を起こしているのだとすれば、自律神経系の働きを正常化させる『温冷浴』、『背腹運動』の実施をお勧めします。
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