
人工軽油と原油、そして超臨界水 時事38
YouTube 視聴可能な方は、まずこのYouTube プログラムをご覧いただきたいと思います。
https://www.youtube.com/shorts/4jiTNlD-U_0?feature=share
大昔から、こういったパターンの詐欺話はたくさんありました。人をだますために、わざわざオートバイを改造して、水だけで走るエンジンの開発に成功した、とか言って開発研究費名目で騙し取るとか、永久機関を思わせるトリック実験用の模型を製作して、騙し取るとかいったようなパターンの詐欺です。
ご紹介したYouTube 番組に出演しているのは、開発者であり、阪大、京大、立命館大の教授を歴任し、紫綬褒章、瑞宝中綬章を受章した紛れもない、評価の高い一流学者です。
詐欺話に登場するような、「下町のエジソン」といったように紹介される方々とは、研究者、学者としての評価ランクが根本的に異なります。
誤解が無いように申し上げておきますが、別に、学者としての肩書などなくても、すごい発明をされる方々も当然存在しますが、広く認知された研究実績等のある方であれば、必要なチェック項目がうんと少なくて済みますから、比較的ご紹介しやすいということです。
少なくとも現役中は、マッドサイエンティスト的な要素は皆無であったと断言してよろしいかと思われます。
ご紹介する学者のご専門は、生物化学、遺伝子工学、微生物学だそうで、微生物研究と微生物を利用したエネルギー開発であった、と紹介されています。
研究の概略
ご本人からは、「ちょっと違うんだけどな~」とか言われてしまうかも知れませんが、概略は以下の通りです。
世界の争いごとの多くは、資源の奪い合いが原因となっています。ですから、環境に優しく、コストの安いエネルギーの確保は、人類の最も重要な課題であると言えるかと思います。
どういった発明なのかと言いますと、この部分だけ聞いたら、この先読むのをやめてしまう人の方が多いと思われるような、あり得ないような研究です。
その内容は、水と大気から石油を造りだすというまさに信じがたい内容なのですが、YouTubeでも優先的に配信されるようになっていますし、まさか、YouTube社自体が、詐欺話の片棒を担いでいるとはとても考えられません。
日本支社の幹部が買収されて、といった可能性も皆無とは言い切れませんが。
多くの常識を持ち合わせている人は、ここで、ついに私も狂気の世界に踏み込でしまったか‼と思われても、致し方のないような内容ではありますが、まず、YouTube をご覧いただいた方がよろしいかと思います。
YouTubeを見ることが出来る機器をお持ちでない方に、ざっと文書で内容を解説します。
エネルギーとして利用できる、石油系の液体に必要な原子は、H(水素)、C(炭素)、O(酸素)(Oは絶対必要条件ではないようです)ですが、HとOは水に含まれていますし、水には存在しないCは空気中の二酸化炭素(炭酸ガス)を取り入れて結合させるのだそうです。
もちろん、そんなことできれば苦労しないでしょ?
ということになるのですが、空気中に存在しているCO2 は、分子としては自由運動をしていますから、容器を置いておけば勝手に容器内に飛び込んできて、主原料である反応性の高いラジカル水に取り込まれて、石油系の液体の要素である、H、C、Oの3役トリオが揃うのだそうです。
分子構成を変化させるための見本として原型に使う「タネ油」と、その現象を起こさせる不純物が全く含まれない「純水」を、特殊な光触媒によって加工してラジカル水にしたものだけでできるのだそうで、あとは効率を上げるためにその液体を攪拌する装置だけであるとのことです。
つまり、必要エネルギーはポンプや撹拌機の電力だけである、とのことです。
もちろんこれが事実であれば、世界的大発明であり、こんな結構なことはありませんで、将来のノーベル賞確実です。
専門外ではありますが事実関係に関して、少し掘り下げてみたいと思います。
疑ってしまう点
実現はまったくしなかったものの、多額の国費をつぎ込んで失敗した、新型コロナウイルスワクチン開発の「アンジェス」を、自治体として応援してきた、「維新の会」支配下の自治体である大阪府市が協力、援助をしていること。
普通なら、自治体のバックアップを受けているということは、信用の裏付けになるのですが、最近の「維新の会」支配下の自治体だと、そういう意味ではまったく当てにはなりません。
首長自ら、ポビドンヨードうがい薬がコロナに有効であると、テレビ会見でマスコミに大々的に発表、紹介したような、科学性、計画性に欠けたリーダーが大きな影響力を持っている自治体のバックアップでは、裏付けにはまったくならないであろう、ということです。
そう言えば、2025年開催予定の関西万国博覧会も、開催が難しくなってしまっているのではないか?と言われてしまっているような有様です。
各種報道を見ておりますと、まさに万博開催は危ういのではないかとは思います。
ラジカル水
ベースとなるラジカル水が、具体的にどういった分子構造を有するものであるのか?といった点で、そのラジカル水生成装置は特許をすでに取得していとは言うものの、産生される『ラジカル水』に関する、具体的な分子構造等についての言及がなく、特許が取得済みなら、もっと具体的に説明してくれれば良いのになぁ…、とは思います。
説明の中で、「特許取得済み」であるとか、「水を特殊光触媒で活性化」とか、一見科学的なようで、何ら具体的な説明がない、という点では詐欺話パターンと典型的共通点であると言えます。
ラジカル水というのは通常の水の分子構造とは異なって、安定状態ではないから、いろいろな物質と積極的に結合する性質を持つ、ということなのでしょうが、うまくCO2 のうちの炭素原子だけを決まった配列に取り込み、結合させられるのか?つまり期待する別物質に変換させられるのか?という点には疑問が残ります。
また、最初に産生させたい液体(軽油を産生させたいなら軽油を)を『タネ油』として入れておく必要がある、ということなのですが、どうやってその分子構造を学習させるのか?という点も疑問ですし、コピーしてくれる仕組みや原理も全く不明です。
こういった点を考えると、極めてインチキくさい面も多々あるのですが、次は真実性を思わせる点について、記述します。
嘘をついてとしたら大役者
この装置と言いますか、原理について基本的部分の発明、発案者である、今中忠行京都大学名誉教授がスピリチュアル系の YouTube 番組に出演して熱弁をふるっておりますが、これで嘘をついているのだとしたら、故森繁久彌氏に勝るとも劣らない名優でして、学者にしておくのは惜しいと言えるくらいです。
いままでのこういった類の詐欺話は、石油業界や政治家に妨害されてしまって、銀行などにも手が回っていて資金調達が出来ない、あと一千万円もあれば完成する、試験装置が完成したら権利の半分を上げる、とかいったような甘言でお金をだまし取るのが常道です。
ところが、実際にその製造装置を月額50万円でレンタルするということですから、嘘があればたちどころにバレて窮地に陥ります。
研究費の助成であれば、次々と実現できない理由も口先だけで捏造できますが、実際の製造装置を貸し出してしまうのですから、待ったは効きません。
しかも、ローカルとはいえ、テレビ番組やYouTubeで幅広く紹介されてしまっていますから、インチキがあればあっという間に全国的な話題となってしまうでしょう。
つまり、全国の多くの人がインチキだということを認識してしまうことになります。
製造装置をレンタル契約で貸し出す
なかには、そんなすごい発明なら、自分で製油所を造って販売すれば、もっとはるかに儲かるのに、それをやらないのは変だ、インチキに違いない、といったような軽薄な指摘をする向きもありますが、銀行が十分な担保もなしにそのような、真偽も定かでない案件に対する巨額融資案承認する訳がありません。
一度回り始めれば、うちから借りてくれという申し出が、全国の銀行などから殺到することでしょうが。
製油所設備、貯油タンク、もちろんそれらを建設する土地の確保、すでに系列化されていると思われる、各ガソリンステーションへの配送システムの構築(たぶん、既存の石油精製会社等からの圧力で、新規に輸送会社を設立する必要も出てくる)等々を考えると、どう少なく見積もっても最低で10億円やそこらは必要ではないでしょうか?
そういった諸条件を全て満たすとなると、もっと多額の資金が必要かもしれません。
一方製造装置のレンタルであれば、各々は小資本でも稼働可能ですし、脱税問題も納税義務者は各装置設置者になるかと思われますので、その問題も回避できるという、今時点ではたぶんもっとも妥当なやり方でしょう。
ただし、逆算すると、現在の軽油の実勢価格が130円強といったところでしょうから、タネ油(最初だけ必要とのこと。産生が始まってしまえば、新規に合成された油がタネ油の役を果たしてくれるので、同じ容器の中で継続産生させ続けさせる限り、補充は無用とのこと)の原価や水代はあまりに小さいので無視したとしても、およそ、毎月3~4キロリットル以上消費するような事業所であれば、トントンにはなるでしょう。
本当に順調に合成され続けるのであれば、硫黄成分をほとんど含まない(大気中の亜硫酸ガスなども、微量ではあっても多少は取り込んでしまう可能性)ので、排気ガスもクリーンであるし、燃焼室等のエンジン本体や補器類(燃料パイプ等)の耐久性も相当向上させることになると思われます。
結局、原価としては軽油引取税の納付分も見込んでおかなければなりませんから、装置を導入して本当に良かった、というためには、最低でも数十キロリットル程度の軽油消費がある事業所でないと、目にみえるような経済効果は得られないかと思われます。
そうなると、自社施設内に地下軽油タンクを備えなければいけないでしょうし、間違いなく軽油である、と消防関係の役所に認定されれば、タンク容量によっては危険物取扱主任者の常駐であるとか、目にみえないコストもかかってきます。
繰り返しになりますが、軽油には地方税としての『軽油引取税』が1リットル当たり32.1円課税されていますので、その件に関しては事前に各都道府県の税務担当部署などと十分かつ綿密な打ち合わせをして、絶対に脱税にならないように事前準備と当局の了解が必要であると思います。
以前にも何かの話題の時に記述した記憶がありますが、小型船舶用のA重油というのは、実質的には軽油でして、違いは軽油引取税を納めているかどうかだけの違いです。
過去にも、船舶用のA重油をトラック用に流用して、脱税で摘発されたケースが多々ありました。
原油のでき方と超臨界水
実はここからが本題なのですが、子供時代に漫画月刊誌を読んでいた人であれば、手塚治虫先生(昭和3年生=1928)の作品等で、石油はあと30年で枯渇してしまう、という記述、記事を読んだことがあるかと思います。
ほぼ全員が、それが事実だと思い込んでいましたから、手塚治虫先生は原子力普及に非常に積極的でした。
作品登場人物の名前からも解るように、「鉄腕アトム」であり、弟は「コバルト」、妹は「ウラン」だったという訳です。
人類が二度と争うことのないように、ということで原子力エネルギーに大いに期待していたのでしょう。
私がその手の情報に初めて接したのは、1960年代の前半から半ばの頃だったと思われるのですが、どの年代に聞いても少年時代に私と同じような情報に接しているようです。
ところが諸般の事情で価格こそ大きく上下しますが、原油自体は一向に枯渇しません。
当初は21世紀になる前に、石油は枯渇して、世界中でエネルギーをめぐる戦争が避けられない、だから無尽蔵なエネルギーとも言える核分裂、核融合エネルギーに期待したものと思われます。手塚先生は、太平洋戦争経験者です。
従来の技術でも石油系燃料の合成は可能
理論的にも実験的にも、こういった合成石油の製造は可能ではあったのですが、そのためには超高温、超高圧の環境が必要なのだそうで、その環境を作るために必要エネルギーは莫大なものになり、とても採算が取れない、ということだったわけです。
今回の、光触媒を用いて産生したという「ラジカル水」によって、それが可能になるのかどうか?ということはちょっと置いておいて、これが地中深くでは、日常的かつ一般的な環境であるというこは間違いありませんとです。
つまり未だに枯渇しないのは、新しい油田が次々と発見されるから(もちろんそれもあるでしょうが)ではなく、休むことなく地中の深いところで原油が造られ続けているから、という可能性の方が高いと思われるのです。
マグマの成分などに興味を持ったことのある人など、あまり居ないのではないかと思いますが、マグマというのは単に岩石や金属だけが溶解したものではなく、水や二酸化炭素も豊富に溶け込んでいます。
九州大学のマグマ研究者の論文の一部をご紹介しましょう。
地中のマグマが地表近くまで上昇すると、圧力が下がってマグマに溶け込んだ水や二酸化炭素などの揮発性成分が一気に気泡へと変化し、激しい噴火を引き起こすのです。
最近の説では、地震の原因となるエネルギーは、プレートの移動、圧縮による堅固な岩盤の破断、破壊によるものなどではなく、この力によるのではないか?という説が急速に脚光を浴びています。
私も以前から疑問ではあったのですが、いくら堅固な岩盤が変形限界を超えて破断、座屈破壊的な現象が起きたとしても、こういった周波数の異なる多種類の振動を発生するものであるのかどうか、疑問でならなかったのですが、超臨界水の爆発的噴出が原因であるとすれば、十分に合点がいきます。地下核実験が確実に地震観測装置で把握できるという事実がありますので。
そういう訳で、プレートテクトニクス理論は、急速に廃れつつあり、地震のエネルギー発生の源は、超臨界状態となった、水の移動(噴出)こそが原因ではないかと考えられ始めているという訳です。
単なる地震のエネルギー源としては『超臨界水』の噴出だけでも十分ですが、マグマにはH2OもCO2も多量に含まれているとうことは、現在では常識ですから、地下のマグマ層には、原油(基本は炭化水素)を造るために必要な全成分と超高圧、高温という条件が完璧に揃っていることになります。
そうなってきますと、逆に要素が複雑になり過ぎて、ますます地震予知というのは困難になってきてしまうことになりますが、今までの理論とは異なるから認めない、受け入れない、というのでは医学界と同じになってしまいます。
地震学も医学と同様、科学になり切れていない部分が多々ありますから、多くの地震学者がこの説に同意するようになるには、まだ20~30年は要するものと思われます。
結 論
この製造装置のレンタルは間もなく始まるということですから、インチキならインチキですぐにバレてしまうことになります。
そういう意味では研究開発のための出資でなく、装置のレンタル料として受け取るという手法は、詐欺としてはあまりにも効率が悪いということになります。
発明者ご本人は経歴からして、税務、会計に強いとは言えないでしょうから、レンタルとリースの区別がついていないことも、十分あり得ることではあると思いますが、当初謳っていた性能、機能をまったく発揮できなかった場合には、いくら長期レンタル契約を締結してしまって、支払いを拒絶したとしても、民事訴訟で負ける可能性はまったくと言って良いほどありません。
リース会社は所詮金融機関ですから、あまりにも危なっかしい製品のリース契約には応じないでしょうから、やはり、独自のレンタル契約で貸し出すのでしょう。
年内にも実際に使用を開始するユーザーが出ることになりそうなので、どうなるか今後に注目していきたいところです。
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