西式健康法

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血圧とは ① | 考察09

約9分

血圧については、前のブログでも簡単に述べましたが、もう少し詳しく解説します。

血圧とは動脈血管壁に作用する圧力のことです。では圧力とは何かというと、日本版ウィキペディアでは『物体の表面あるいは内部の任意の面に向かい垂直に押す力のこと』と説明されています。

この説明では解りにくいかと思いますので、別な角度から説明します。

単純に作用する力は、Kg等の重量と同じ単位で表現しても、地上では実質的には何の問題もないのですが、圧力をKg等の質量単位で表現しようとするなら、単位面積当たりの質量で表現する必要があります。

つまり以前は圧力単位として主流であった、「kg/cm2」(現在では、より単位の意味を明確にするために「kgf/cm2」と表現します)といった単位で表現する必要があるということで、それよりもっと昔には、「PSI」という単位も用いられていたかと思います。

この「PSI]は、現在では実質的には米国だけで使用されている圧力単位であって、「ポンド・パー・スクエア・インチ、つまり、「Lb/in2」のことであり、1平方インチ当たりにかかる力をポンドという重量単位で表現した単位です。

米国製自動車の空気圧指示も、さすがにkpa(キロパスカル)も併記されるようになったようですが、今でもこの「PSI」という単位が主流です。

圧力に対する認識

地球上に作用している大気による圧力、即ち大気圧はわれわれの体表にも均等にかかっています。

 

その大気圧を、台風の勢力や高、低気圧の強弱を表現する際に用いられ、聞きなれているヘクト・パスカル(hPa)という単位で表現すれば、1013 hPa であるとか、945hPa(台風等の場合)といった値になります。

かなり以前は、実質上同じ数値となりますが、「mbar」(ミリバール)と表現していました。

 

1013 hPaを、昔日本でも採用されていた圧力単位である「kg/cm2」で表現すれば、約1.033 kg/cm2 となりますし、血圧で使用される「mmHg」という単位で表現すると約760 mmHg となります。

日本人の平均体表総面積は約1.6m2 なのだそうで、これを平方cmに換算すると、16,000cm2となりますが、この数値を元に掛け算すると、全身にかかる空気による総重量は何と16t!!ということになってしまうのですが、この算術のトリックには引っかからないで欲しい、ということも申し上げておきたいと思います。

そのために、わざわざ単純な重量とは区別して「圧力」という概念、単位が存在します。

あくまで、垂直に押される力を単位面積当たりとして表現した数値であって、その圧力値と総面積と掛け算で「積」を求めることには何の意味もありません。

一方、ご承知のように血圧の単位は未だに「mmHg」を用いていますから、大まかな換算すらごく一般の方々にとっては困難であろうと思われますし、具体的にどの程度の力が血管壁に作用しているのかということについても、まったくといってよいほどイメージが湧かないのではないでしょうか?

 

まず、安静時であれば一般的にはありえないレベルの高血圧である270mmHg を各々の単位に換算してみましょう。およそ360 hPa であり、0.367 kg/cm2 となります。

前号ブログでもご紹介したように、大気圧をはるかに下回る値であるということがお分かりいただけるかと思います。

ここでご注目いただきたい点は、「kg/cm2」 であるとか、「Lb/in2」 といった単位面積当たりにかかる重量を表現した単位とは異なり、「mmHg」という単位には単位面積が出てこないことです。

言うまでもないことですが、「mm」は長さの単位であり、「Hg」は水銀の元素記号です。

どういう理屈で圧力を表現しているのかというと、これは最も原始的な圧力表記の方法です。

ガラス管内の水銀であったり水であれば、どれだけ押し上げてくれる力(正確には圧力)に相当するか?ということで圧力の大きさを表しています。

「mmHg」とはガラス管の中の水銀の柱がどれだけ上昇したかを、ガラス管に刻んだmm単位のメモリで表しているわけです。

血圧測定の場合、最大血圧が140mmHg であったということは、水銀を入れた柱の高さと、それと管でつないだマンシェット(腕帯)というゴム製のベルトで腕を締め上げていった結果、腕の動脈の血流に変化が生じた(上腕動脈の血流が阻害され、拍動の音が聞こえるようになる)時点での水銀柱の高さを目盛りで読んだ値、ということです。

最小血圧は、その音が消えた時点での水銀柱の高さです。

 

圧力単位はこうした最も原始的な単位から、単位面積当たりにかかる重量、さらには、重力の影響を受ける要素があると、宇宙空間や同じ地球上であっても場所によっても異なることになってしまいますから、宇宙のどこへ行っても普遍的な単位として使える、例えば Pa(パスカル) のような単位に、より正確を期すために変遷してきました。

なお、例えば140 mmHg という圧力がかかっている水であれば、水銀の比重であるおよそ13.55(20℃)を掛ければ簡単に答えが出ます。

その高さは平面からおよそ1.9 mの高さまで達することになりますし、血球という個体成分や塩分を含んでいる血液の比重は1.05として計算することになっていますから、およそ1.8m まで達することになります。

 

医学は異常

 圧力を表すのに「mmHG」という単位が用いられるようになったのはいつ頃からか?ということは、はっきりとはしないようですが、これが圧力単位に使えるという原理的な発見は、17世紀半ばのイタリアの学者トリチェリです。

血圧測定の単位として広く使われるようになったのは、ロシアのコロトコフが20世紀初頭に水銀式血圧計の使い方を考案、実用化した後であろうと推察されます。

日本では以前尺貫法という計量単位(尺、寸、貫目、匁等々)を用いていましたが、1951年に計量法によって一部例外を除いてメートル法が義務となり、特殊な単位を除いてはメートル、グラム等での表示が義務付けられました。

また、1991年には日本工業規格も国際単位基準準拠となり、完全に日本もメートル表記以外は許されなくなったということになります。

私自身(昭和27年1月生)も小学校低学年の頃には、近所の乾物屋さんにお味噌200匁といった単位でのお使いに行かされた記憶がありますが、学校では当然メートル法による教育を受けていましたから、混乱といったものはまったくありませんでしたし、たぶん私の両親世代もほんの一時期、多少は戸惑ったのかもしれませんが、すぐに適応したものと思われます。

医学会では、なぜ?まるで尺貫法レベルの古典的な単位を使い続けているのかというと、当初は、一気に変えてしまうと人命に関わるということで、単位の変更まで相当期間の猶予を認める、という趣旨であったようなのですが、その後、日本においては法律の改正(平成5年施行の「計量単位令」)によって、血圧を表す単位としては計量法の規定とは異なるものの「mmHG」を合法的、恒久的に使用できることになったのだそうです。

こういったことでは、うんと先の話かもしれませんが、宇宙医学といったことが本当に実用的な意味を持つことになった場合には、重大な障害となる可能性もあるのですが…。

その他に、同令の施行によって計量法の規定に関わらず、国際単位以外で使用継続が合法的になった単位としては、海里(ノーティカル・マイル:海上の距離)、カラット(宝石類の質量)、トロイオンス(金の質量)、カロリー(摂取及び代謝熱量)、ノット(船舶、航空機の速度)等々があるとのことです。

また、脳圧や心室内圧など、生体内の圧力を現す単位としてはトル、ミリトル、マイクロトルを使用するように政令で決まっているのだそうですが、この単位も数値的にはmmHg とまったく同じであって、実質的には同じ数値でありながら単位の呼称のみを変えただけのものです。わざわざ単位を変えて表現させなければいけない理由はなく、まったく意味不明と言うしかありません。

1トルは0.999999 mmHg で、実質的にはまったく同じといって良いですし、そこまで細かくこだわる必要があるなら、パスカル表示に改めるべきなのですが、どういうわけか血圧以外の体内液圧は「トル」で表示することになっているのです。

ドクターが「いかん!!、脳圧が20トルを超えてる。すぐに利尿剤を…」というような言葉を聞いた場合、そこに居合わせた家族等は、ただただ、おろおろするばかりでしょう。

何といってもほとんどの方にとって生まれて始めて聞く単位、単語ですから判断停止に陥るのは確実です。

血圧よりはるかに緻密且つ正確な計測、数値掌握が必要なのであるとすれば、やはり単位として「パスカル」でも指定すれば良いのであって、それをせず、わざわざややこしいことをする理由としては、一般人に故意に判りにくくしているか、難しい、聞いたこともない単位を使って、とくに素人には及びもつかない高度且つ特殊な内容であると、コケオドシ、というか単に権威を強調するためであるとしか考えられません。

もしそうではない、と言うなら、医学分野の方々は物理学が極端に不得手であるか、根本的に頭が悪いのか?ということになってしまいますが、頭が悪いということは絶対にありませんから、物理学が苦手か、わざと難しくして、素人に口を挟ませないため、とでも考えるしかありません。

とにかく、たかだか、150mmHg、くどいようですが水中に潜ったとすれば、2m の水深に相当する圧力が、しかも時々かかるだけで、人の動脈血管の細胞がボロボロになるなどということはありえないことだと断言できます。

もし150mmHg程度の血圧で動脈血管が重大な損傷を受けるのであれば、シュノーケルダイビングはもちろんのこと、スポーツ全般、運動そのものが極めて危険な行為ということになってしまいます。

前回も申し上げましたが、血圧が正常値より相当高いということは、循環系に何らかの異常、問題を生じていることは明らかです。

だからといって、降圧薬で血圧さえ下げれば万事O.Kなどという単純なものではないということと、現代の医学会でもそれは分かっているから、単に降圧薬だけでなく高脂血症治療薬をも処方されることが多いということにつながっていきます。

この続きは次回に論述します。

この記事を書いた人

株式会社 西式サービス西会 本部長西 万二郎
昭和27年(1952年)東京生まれ。東京工業大学工学部付属工業高校機械科を経て立教大学社会学部卒業。西式健康法創始者、西勝造の次男・西大助(西式健康法普及団体、西会第三会長、故人)次男として生まれ、在学中より西式健康法西会本部に勤務し西式健康法普及活動を開始。昭和52年業務部長、昭和63年本部長に就任。主な著書に『西式健康法入門』(平河出版社刊、共著)がある

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