西式健康法

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工場野菜 | 栄養06

約5分

先日も、工場で生産された水耕栽培野菜がデパート等で販売されているといったニュースが紹介されていました。

LED照明のおかげで、電気代の負担もかなり減って屋内水耕栽培が盛んになってきたようです。

天候の影響もまったくといって良いほど受けませんから、収量が安定していますし、青虫などが付着する心配もまったくありません。

種付けから出荷まで、一切土にも触れないから細菌もつかず、衛生状態がすばらしい、無菌に近い状態というのがセールスポイントです。

また、新たに施設を建設するか、ビルの空き室等を大幅に改装してして工場野菜生産を始めるわけですから、代々続いている農家などと比べれば、初期投資はかなりの負担となるはずですし、現在時点では、農家と異なり農地に対する固定資産税減免のような制度もないものと思われますから、ランニングコストもそこそこかかることになります。

既存農業よりコストがかかっていることは明らかですから、高く売らないことには採算が取れません。

そこで売りにしているのが、畑で栽培した農産物と異なり衛生状態が格段い良いということなのです。

また、味についても理想的な培養液を供給することによって、例えばより糖度の高い、味の濃い農産物にすることも可能ですから、高級店でそれなりの価格で店頭に並べても十分に売れる、というコンセプトのようです。

これらの研究は、長期宇宙旅行や極点における長期滞在といった特殊状況、あるいは、地球が寒冷化でもして露地栽培農産物の収量が激減してしまうような状況に備えての対策としては極めて有効であると思われます。

しかし、今現在の時点でわれわれにとって良いことであるのかどうかというと大いに疑問があります。

 

野菜の良いところは?

 たぶん、多くの方々は「ビタミン・ミネラルが豊富」、「繊維質が豊富」といったことを思い浮かべることでしょう。

これらはもちろん事実です。重要な微量栄養素が豊富ですし、繊維質が豊富ということは排便をとてもスムーズにします。

繊維質の一部は善玉菌とされる腸内細菌群の栄養にもなるということなので、大いに結構なことではありますが、もうひとつの大きな要素、野菜に期待している重要な要素をほとんどの方々が完全に見落としています。

それは、自然の菌を大量に摂りいれること、そのために非常に有力で欠かせない食材であるということです。

多くの方々が衛生管理、殺菌といった行為が、健康維持、増進に非常に有効な手段と思っているようですが、哺乳類よりはるかに昔から棲息していた細菌類との共存なしに、健康に過ごす、暮らすなどということはとうてい考えられません。

確かに、無菌マウスの方が寿命は倍近く長くなりますが、青空の下で暮らしたければ無菌になどできるわけがありません。

夏季になると、冷蔵庫にしまい損なった生鮮食品は、半日で異臭がし始め、2~3日で顕著なカビが観察されるようになります。

 

細菌類も同じペースで繁殖しているのですが、カビより大きさが小さいのと、カビのように菌体が限りなく連鎖するような繁殖の仕方ではないから目立たないだけです。

 

哺乳類の消化管内は多くの細菌にとって好適環境ですから、放置してある生鮮食品以上に細菌を増殖させます。

そこで、哺乳類が築き上げてきた賢い選択が、細菌との共存という生き方です。味方にできる菌を積極的に消化管内等で培養して、有害な菌(哺乳類、あるいは人類にとって有毒な生成物を産生する細菌群)をできるだけ抑制しよう、それでも防ぎきれずに発生してしまった有害物は、肝臓で解毒、分解処理を施すという戦略です。

 

そして、その味方となる細菌群の代表が乳酸菌群であるというとになるのですが、例えば、ヨーグルトを自家発酵させてヨーグルトを作る場合、ただ牛乳を加えて作り続けていると、かならず短期間の間に腐らせてしまいます。

 

同じ種菌を繰り返し分裂繁殖(発酵)させていくと、一定比率で必ず生じる変異菌の発生によって性質が変わってしまうのです。

 

もっとも、この変異しやすい性質のおかげで、一般常在乳酸菌であってもごく一部は消化管内で腸内型乳酸菌に変異し、ヒト腸内型乳酸菌となって、われわれの健康を守ってくれているということになるのです。

 

なお、この「変異」は無秩序な「突然変異」とよばれる、放射線等によって生じるDNA変異ではなく、必ず一定比率で分裂時に生じる計算された変異です。

 

進化の可能性が非常に限られている細菌類、雌雄の遺伝子を組み合わせて可能性を広げるという手段を持たない無性生殖である細菌類の驚くべき能力です。

 

そういうわけですから、工業生産品として安定した状態(変異を起こしにくい)を期待される大量生産ヨーグルト等に使われている乳酸菌類では、現実の問題として健全な腸内細菌叢育成という意味では、ほとんど役に立たない可能性もあるということになります。

それらの乳酸菌が腸内型に変異する可能性は、まったくといって良いほどないからです。

 

ではどうするのか、自然の多種多様の乳酸菌群を含む細菌類がたっぷり付着した野菜を食べて、できれば根についている土壌菌も含めて、できるだけ多種多様の細菌を取り入れるということが非常に重要であるということです。

 

そういう目的ですから、できるだけ細菌を殺さないように生で摂るのが良いに決まっているし、そのまま葉の形で食べるよりは、できるだけ細かく砕いて泥状汁にして、しばらく置いて、細菌を培養しやすい状態で培養したほうがより良いということになります。

 

つまり、西式健康法の「生食療法」は信じられないほど有効であるし、腸内細菌叢を改善することが目的ということになれば、例えばもう少しは美味しい「生食」等、実践が楽な方法を工夫する余地も出てくる、ということでもあります。

この記事を書いた人

株式会社 西式サービス西会 本部長西 万二郎
昭和27年(1952年)東京生まれ。東京工業大学工学部付属工業高校機械科を経て立教大学社会学部卒業。西式健康法創始者、西勝造の次男・西大助(西式健康法普及団体、西会第三会長、故人)次男として生まれ、在学中より西式健康法西会本部に勤務し西式健康法普及活動を開始。昭和52年業務部長、昭和63年本部長に就任。主な著書に『西式健康法入門』(平河出版社刊、共著)がある

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