西式健康法

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宇宙飛行士 | 考察07

約4分

2016年10月30日、大西卓也さんが国際宇宙ステーションから帰還ポッド「ソユーズ」に乗って無事帰還しました。

大西飛行士が担当した主要な研究・実験テーマは「健康長寿社会の形成等、国の科学技術イノベーション政策に貢献することが期待される小動物の長期飼育」とのことですが、実験成果には大いに期待したいところです。

何十年か先の将来には試みられるかも知れない、長期惑星間飛行の問題点を調べるという目的だったのでしょう。

お話させていただきたい内容は実験に関することではなく、多くの方がご覧になったであろうソユーズ帰還時の映像に関してです。

3名の飛行士は、両脇を支えられてソユーズから降り立ち、というより抱え出されて、その後もゆりかごのような椅子の上に載せられ、まるでお神輿を担がれるような形で回収されたシーンをご覧になったことでしょう。

なぜそのようなことをしなければならないかご存知でしょうか?一部には、長期間の無重力状態での生活で筋肉が衰えてしまい、重力が存在する地上では自らを支えきれずに転倒してしまうリスクが高いから念のため、といったように伝わっているようですがこれは誤りです。

「重力がある地上では、転倒してしまうリスクが高くなる」というのは事実ですが、それは筋力が衰えてしまったからではありません。

無重力状態においては、当然のことですが重力の影響を考慮する必要がありませんから、体液(血液等の体内水分の総称として)移動に備えた予備水分は、宇宙滞在中に尿として捨ててしまったからです。

地上では重力の影響を受けます。寝ていた状態から起き上がると、重力によって体液は下肢の方向に向かって移動を始めます。

下肢(主として下肢静脈血管内及び下肢細胞組織間)にもともと適切な量の体液(無重力下においては過大な量)を保持していれば、先が詰まっていますから移動する体液量にも限界があり脳貧血は起こすことはありませんが、無重力に適応した体液量になってしまっている人は、つまり大西さんのような宇宙飛行士たちのことですが、彼らは容易に脳貧血を起こしてしまいますから、自力で歩かせることは非常に危険だというわけです。

逆の観点から説明しますと、宇宙ステーションに移動してから数時間の間はだれでもかかなり浮腫んだになることになります。

私の記憶している最初の映像は毛利衛飛行士の宇宙船内からの実況中継ですが、申し飛行士の顔がかなり浮腫み気味で、一方脚は非常に細く見えたのを記憶しています。今でも、NHKアーカイブスやYou tube 等でごらんになれますから興味がおありの方はご覧ください。

こういったことから、はっきり申し上げられることは数日間寝たきりに近い病人、けが人(とくに導尿管や尿瓶を使用して本当に寝たきり状態であったような人)の場合は、絶対に急に立ち上がらせてはいけないということです。とくに痩せ型の人はもともと水分保持量が少ないのでいっそう注意が必要です。

数時間は上体のみを起こした状態ですごさせ、寝たきりの状態、つまり準無重力に近い状態であったために予備水分を捨ててしまっていますから、その分を補充するために少しずつ水分補給をしながら慣らしていくことが大変重要です。

病人でない健康な人であっても、血液、体液移動は重力の影響を確実に受けています。立位姿勢であっても、歩行さえしていれば下肢の筋ポンプ作用によって血液、体液を心臓まで押し上げてやることができますが、立ちっぱなし、座りっぱなしで過ごすということは確実に浮腫みを助長します。

50~60年前であれば、誰でもが相当量の歩行をし、しかも椅子、テーブルを使用する家庭もまだ少なくて、ちゃぶ台を使っている家庭の方が多かったでしょうから、家で過ごす時間も脚と心臓の高低差をそれほど気にする必要もありませんでしたが、今日のように日本でも椅子、テーブルが当たり前、どこへ行くにも自動車ということになってくると、これはもう無視することはできません。

ですから、今日ではなおのこといっそう重力の影響で生じる浮腫み(循環不全の始まりと言っても過言ではありません)を日常的に解消してやる必要があり、そのための毛管運動であり、合掌合蹠法、足首トントン運動というわけです。

 

 

この記事を書いた人

株式会社 西式サービス西会 本部長西 万二郎
昭和27年(1952年)東京生まれ。東京工業大学工学部付属工業高校機械科を経て立教大学社会学部卒業。西式健康法創始者、西勝造の次男・西大助(西式健康法普及団体、西会第三会長、故人)次男として生まれ、在学中より西式健康法西会本部に勤務し西式健康法普及活動を開始。昭和52年業務部長、昭和63年本部長に就任。主な著書に『西式健康法入門』(平河出版社刊、共著)がある

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