西式健康法

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圧死事故について 時事24

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圧死事故について 時事24

          圧死事故について

圧死事故というものは、何年かに一度、世界のどこかで起きている事故なのか、十分に情報が入らない国々の分も含めれば、世界のどこかで、毎年数件は起きているのかも知れません。

ご存じない方はいないと思いますが、韓国ソウル市の梨泰院(イテウォン)という繁華街で、ハロウィーンナイトの前々夜に、150人以上が亡くなるという大量圧死事故が発生してしまいました。

うんと若い方を除けば、2001年7月に明石市で発生した、花火大会に向かう群衆による、横断歩道橋で発生した事故を覚えておられることと思います。この明石の事故で、亡くなった方は9名であったとのことです。

こういった事故が起きると、必ず、責任の所在はどこの誰にあるのか?今後どのように群衆警備を行えば再発は防げるのか?といったことに議論が集中してしまいます。

しかし、もちろん、そういった対応も非常に重要ではありますが、不幸にして事故が発生してしまった場合の救助法の確立、救命率の向上といった観点から、直接的な死因についても、もっと追求すべきであると思います。

圧死といっても色々

 地震で倒壊した建造物の下敷きになって死亡した場合も、今回の梨泰院事故で亡くなった方も、ざっくりとした死因として『圧死』と表現されますが、実際の検死解剖所見は各々でかなり異なるのだそうです。

地震で堅固な重量物に胸腹部を挟まれて亡くなったような場合は、胴体部全体に強い圧迫を受けたわけではなく、特定部分に対する最初の一撃を含む、局所的かつ強力な圧迫を受けたことによって死亡する、『外傷性窒息』と呼ぶのだそうです。

本来なら胸腹部を動かして、肺の空気を入れ替えて呼吸している訳ですが、それが落下物などによって、抑え付けられ、阻害されることによって、十分な換気が出来ずに結果的に窒息死する、と考えられているようです。

また、外傷性窒息を研究している学者によると、その状態が1時間程度継続すると『外傷性窒息』で死亡するリスクが著しく高くなる、と述べています。

一方、梨泰院事故では局所的に強い力が加わったことが原因となる死者は、ほとんどいなかったものと考えられます。

梨泰院や明石の事故は、群衆に四方から強く圧された状態での死亡であるからです。

立位状態で、全く呼吸が出来ないほどに身動きが取れなくなっているような人は、少なくとも映像からは確認することが出来ません。

実際に人々が転倒するまで

一部の学者は、現場検証や映像解析が十分に行われていない状況でも、「立ったままの状態でも、圧死事故は起こり得る」などと言って、あまり深く考えずに結論を出しているようですが、複数の映像で確認しても、ヒトの流れが完全に止まることはなく、終始揺れ動いている状態です。

つまり、立ったまま、全く身動きできずに、強度の胸腹部圧迫を長時間受け続けた人などいない、ということです。

実際に亡くなった方々は、為すすべもなく押され、流されていく状況の中、転倒しないため、バランスを取るために動かそうとした脚が、思ったようには動かせず、ついには次々と転倒してしまった、と考えられます。

その結果、周囲の大勢の人々は、突然発生した空間方向に移動しようとしたのですが、下には人が倒れていて、足を踏みかえることは困難ですから、さらに次から次へと転倒してしまった、ということでしょう。

転倒が相次いでいる中心部分から、ある程度離れた人々は、やっと集団が動き始めたか、としか感じないと思われますから、自分の進行したい方向に向かって、ますます人を押し続ける、ということになります。

ある地点で、「人が倒れて下敷きになっている、戻れ、戻れ」といったような音声付の映像が残っており、やはり群衆の下敷きになった人が亡くなっているものと思われます。

いずれ、死亡者の位置等を示す配置図面のようなものが公表されることとは思いますが、少なくも、大勢の人が『立ったまま圧死』したというような説は、完全な『机上の空論』と言って良いでしょう。

一部医学者特有の『知ったかぶり学説』と言ったら言いすぎでしょうか。

西式健康法では

 もちろん、学祖西勝造の多岐にわたる文献、見解の中には、『圧死』に関する記述はありません。

しかし、ヒトの死亡原因の多くが、『心停止』であるから、心臓さえ止めなければ人は死なない、という浅慮極まりない日本人医学者の発想から、『カンフル剤』という殺人幇助に等しい薬剤を多用してきた歴史があります。
原因を深く考えずに、商売がらみという面も含んで、過ちを繰り返してきたのが近代医学です。

学祖はそれに対して、血液循環は心臓のポンプ作用だけに依存している訳ではないのだから、循環全体のバランスを崩すような薬剤、治療法はかえって危険、有害という説を唱え続けてきたことは、多くの方々がご承知のことです。

こういった、圧死事故の発生そのものを防ぐためには、群衆整理、管理というのでしょうか、集団心理学や群衆警備の方法諭の検証、検討を行うことも極めて重要ではありますが、いざ、発生してしまった場合に、救命率を向上させるための方法論の検討も極めて重要であると考えます。

検死解剖による『死因』は?

多数の人が亡くなったような天変地異、船舶、航空機事故などではすべての死亡者に対して綿密な検死解剖が行われるわけではありません。

直接的死亡原因は、地震によって建造物が倒壊し、その下敷きになったことであり、溺死であったり、強度の衝撃に起因する訳ですが、捜査に当たる警察にとっては、個別の直接死因を究明することには、まったくと言って良いほど関心はありません。

他殺の可能性のといった事件性の有無にしか関心がありません。

ところが、今回のような集団圧死事件による死者は、もちろん、地震によって建築物等の下敷きになって死亡した人とでは、当然のことですが、明らかに異なります。

例えば、素潜りによる潜水記録は現在122mとのことですが、この深さですと、12気圧の圧力がかかります。

それでも、皮下出血を生じることもなければ、身体がペシャンコに潰れることもありません。

生物の体の構成要素の多くを占める水は、空気と異なり圧力によって体積が変化することが実質上ないからです。

全身に均等に力が作用していれば、内臓などが局所的に損傷することはありません。

もちろん、群衆に押しつぶされるような力が作用する場合には、水中のように完ぺきに、均等に、万遍なく力が作用する訳ではありませんが、それでも、そこそこ均等に荷重がかかると言えます。

圧死に関する数少ない論文

 昭和36年の『圧死に関する研究』という、法医学の研究者による論文です。

あくまで法医学の立場からの論文ですから、事件性の見分け方を最優先とした研究報告です。

その一部をご紹介します。

法医学上、死体所見と加害物体との関連性の追求は極めて重要なことであるが、困難を伴う場合もあり、その判断の如何は犯罪事実の認定に影響するところが大である。(中略)

 〇多面性圧迫(梨泰院事件はこれに該当)の際は、二面性圧迫(強固な物体に下敷きになった、地震の被害者等)とは異なり、致命的受傷時の体位の判断は多くの場合不可能であるが、受傷から死亡までの経過中に徐々に圧迫部位が拡大すると、時間的にある程度遅れて圧迫を受けた部位または圧迫を受けなかった部位を皮膚の圧迫性うっ血から知り得る。

 〇圧死において、死後圧迫外力が除去されるまでに数時間を経過した場合は、その経過中に直接圧迫外力を受けなかった部位に死後の圧迫性水泡形成が認められる。

といったことが述べられています。

また、胸部全体への荷重は、体重の2倍までであれば、死に至ることはないが、体重の3倍以上の荷重では、経過時間数の長短はあれ、結果的に100%死亡するし、5倍だと10分以内にすべてが死亡する、といったような数値がテレビ番組でも紹介されましたが、すでにこのご紹介した論文中においても、その研究報告内容が引用されています。つまり、相当古い実験報告であるということです。

ご紹介した論文中では、実験方法として「イヌを台の上に仰向けに固定し、胸部に荷重を加えた」としか記述がないので、どのような方法、器具を用いて荷重を加えたのかがはっきりしません。

縦長胸郭を持つイヌと横長の胸郭を有するヒトに対して、荷重のかけ方によっては、結果が大きく異なってくる可能性もあります。

小さな砂袋用のものを、想定重量になるまで積み重ねていったものなのやら、頑丈な布などの両端に重りをぶら下げて、下方に引っ張るような形で、各々ある程度は全面的に均等に荷重が掛かるような工夫がなされた装置であったのか、あるいは胸郭上に板を置いて、その上に錘を載せていく実験であったのかも不明です。

まあ、普通に考えれば群衆による圧死事故の再現実験としては、適切、と言うか、そのまま適用できるとはとても考えられない実験であったとは思われます。

何を申し上げたいのかと言いますと、時々発生する大事故、大事件ではありますが、直接的な死因等について十分な検証が行われたことがないようだということです。

死に至る経過がかなり異なっているはずの、群衆雪崩によって折り重なる様に、幾層にも重なり合って死亡した人々と、地震の際の単純な下敷き圧迫死を同列に『圧死』と呼ぶところからも、分類が十分でないことが判ります。

脳内の出血性疾患と、血栓等による栓塞症を同じように『脳卒中』という分類で研究し、データを取るのと同様に愚かしいことです。

また、よほどの専門的文献や検死報告以外には、亡くなった方の死後の顔貌、容貌等が公開されることはありませんから、直接死因についての推測は困難です。

救助後の救命法にも関連することですから、もう少し専門医学者、研究者たちには踏み込んで研究をしていただきたいところです。

さて、今回の生存者の中には、脚部の広範囲に皮下出血をおこして、アザ様になってしまった写真が公開されていますが、横方向にかかった力だけで下肢に大きな皮下出血を起こすとはとても考えられません。

それでも本人は転んではいないと証言しています。

胴体部と比較して、下肢の方が断面積は明らかに小さいので、下肢に皮下出血を生じるほどの圧迫を受け続けたのであれば、胸腹部が受けた圧迫はより強かったはずで、もし証言通りであるとすれば、生存自体が困難であったと思われます。

実際は転倒時に踏みつけられたことによって生じた、皮下出血であろうと思われるのですが、ヒトは死に直面するような極限の緊張、興奮状態に追い込まれると、恐怖感情を麻痺させて適切な生き残り行動をとれるようにするためか、記憶が飛んでしまうことが良くあります。むしろ普通のことです。

構造的共通点とCO2

 明石の歩道橋事故現場となった横断歩道橋は、天井部分こそ解放構造になってはいますが、両側は雨風を多少はしのげるように、覆いと言いましょうか、壁が設けられています。半分カバーされた構造の、半閉鎖構造と言える歩道橋です。

梨泰院の現場も、幅3メートル強の道路ではありますが、片側はホテルのコンクリートの高い壁、反対側には商店のような平屋ではない店舗があるようですが、事件当時はシャッターが閉じられていました。

とても、商売ができる状態ではありませんから。
つまり、実質的には両側を堅固な壁、ほとんど隙間のない壁で囲まれている構造、ということになります。事故現場の基本的構造としては、明石の歩道橋と似ているということです。

そこで、考慮すべき要素は何か?ということで思いつくのが、すし詰め状態の人々の呼気に含まれる『二酸化炭素』(CO2)です。

言うまでもないことですが、二酸化炭素は『炭酸ガス』とも呼ばれる、ありふれた安定状態の気体です。サイダーなどからプクプク湧いてくるあの気体です。

標準的なヒトは、呼吸によるガス交換で、安静時には1時間当たり大気圧下で20リットル程度のCO2を排出するとされています。

あの状況では、骨格筋にも相応の力を入れ続けざるを得ませんし、呼吸も早くなってしまっているはずですから、CO2排出量は、より多かったものと推測されます。

二酸化炭素の特徴としては、空気より重く、より水に溶解しやすいという性質を持っていますから、直接的毒性はないと考えられているのですが、条件によっては死亡事故を引き起こします。

比較的最近、新聞紙上で紹介されたのは、地下駐車場の消火設備の点検中に消火剤としての二酸化炭素を誤って場内に噴出させてしまい、複数人が死亡した事故がありました。

同様事故は他にも報道されました。

また、同種の事故は、ドライアイス(冷却し個体化させた二酸化炭素)販売業者が、製品運搬中に自動車内で二酸化炭素中毒死した、という事故も複数件報道されています。

ただ、これ等の事故が、単純な空間中における二酸化炭素の著しい増大による、結果的酸素欠乏であったのか、継続してある程度濃度以上の二酸化炭素を吸引したことによる、血漿中の二酸化炭素濃度上昇による、酸素不足によるものかは区別されていません。

死因

前述の通り、二酸化炭素は空気より重いので、低い部分に溜まってしまいます。死亡原因の中には二酸化炭素中毒の影響もあったのではないかと考えられるのです。

二酸化炭素中毒は、一酸化炭素中毒死亡者(皮膚が鮮やかなピンク色になっているのだそうです)のように、顕著な外形的特徴を呈することがありません。

もちろん、単純な二酸化炭素中毒が原因と申し上げている訳ではなくて、圧迫によって呼吸不全状態となっている状態で転倒し、道路表面近くに溜まった濃度の高い二酸化炭素を吸気せざるを得なくなり、それが、最終的、致命的要因となったのではないかという推測です。

何層にも重なった犠牲者(生死は不明ですが)のうち、最上層で倒れている人も意識を失っているように見受けられる、ということもそれを示唆しています。

圧死現場におけるCO2発生量

 先ほど、安静時のヒト一人当たり、毎時20ℓのCO2 を排出するとご紹介しました。

当日の死亡者と重傷者を併せると、およそ300人ほどでしたが、気分は悪くなったりしたものの、意識を喪失するほどではなかった人を含めれば、400人あるいはそれ以上であったと思われます。

そういった人数が極めて狭い、半ば密閉空間に近い空間で、酸素を消費し二酸化炭素を排出し続けていたことになります。

一方、路地の対象エリアの面積は3.2m×せいぜい7~8mとすると、その空間容積は25㎡程度ということになります。
推定されている密集度が1㎡当り15~6人とされていますので、その重大事故発生現場における人数は、おおよそですが400人程度ということになります。

転倒した場所で、折り重なった状態における地表からの倒れている、最上部の人の顔の高さが60~70cm程度とした場合、最下層で倒れ込んでいる人の鼻、口の位置は、地表から10~15cm程度にすぎません。

最大で5層程度は折り重なっていたことになるかと思いますが、その容積は大きめに見積もっても25㎥程度です。

一方、少なめに見て、300人×20ℓという数値を当てはめて計算すると、閉鎖空間に近い状況の中で、毎時6,000ℓ程度のCO2 が排出されたことになります。

もともと、現代の都会地におけるCO2濃度は0.03%とされていますから、25㎥当りでは0.75㎥程度は存在することになるのですが、ここに毎時6,000ℓのCO2、つまり6㎥ が加わると、濃度は、信じられない数値ですが、計算上はなんと27%程度にまで跳ね上がることになります。
もちろん消費された酸素の濃度は、相応に低下していることになります。

全く無風の完全密閉空間という、実際にはあり得ない条件ではありますが、二酸化炭素中毒を起こす濃度が、3~4%で頭痛・めまい・吐き気などが表れ、7%を越えると意識を失い、その状態が続くと呼吸停止の状態となるとされています。
そして、20%を超える状態だと数秒で死に至るとされています。局所的にはそういった環境が生じた可能性は否定できないものと思われます。

考察と対策

単に周囲からの圧迫で、いくら強大な力がかかったとはいえ、ここまで大勢の人々が死んでしまう、といったことが現実に起こり得るのか?ということが、どうにも納得がいきません。

何と言ってもこういった事故に対する動物実験は、前述のように60年以上も前にイヌを被験動物として行われたきりで、精密なセンサーやコンパクトなコンピュータなども全く存在しない時代の、原始的な方法による実験です。

これが、胸腹部圧迫による呼吸困難(胸郭を十分に膨らませきれないことによる呼吸不全)であるとするなら、実際に血中酸素濃度がどの程度低下していたものであるのかといった計測は欠かせません。

確認実験は比較的簡単で、水中で深度を変えながら、スノーケル様の器具で大気圧の空気を吸わせ、血中酸素濃度の低下具合や、本人の感じる不快感を聴取していけば、良いだけです。

ただこういった方面の医学者は、単純な静荷重と圧力の違いもまったく認識していないようですので、体重の2倍と称する荷重は、前述のように単に体重の2倍の錘を載せただけなのか、周囲から万遍なく圧力をかけた結果(水中における水圧の増加と同様な)なのかも、全く区別することなく論じています。

今回の事故のように、大勢の人が折り重なって倒れ込んでいるような状況で、一人でも多くの人の生命を救おうと思ったら、何としてでも空気圧送パイプを折り重なった人々の最下部に挿入し、送風することによって二酸化炭素を急速排気してやれば、何人かは助けられる可能性もあるかと思います。

もちろん、この仮説は、私のまったくの見当違い、大間違いという可能性もない訳ではありませんが、医学界ではこういった仮説を展開することをとても嫌う傾向がありまして、何十年前の、仮に妥当性を欠く実験、研究であろうと、エビデンスが重要ということで、顧みられることがありません。

これが医学の進歩を妨げているのですが、大昔の正確性、妥当性に、大きな疑問があると考えるべき実験データであっても、平然とそれを引用して、したり顔で解説するといった、困った習性が存在します。

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