
またまた、最新医学にいちゃもん!!
『寒暖差疲労?』
前回ブログでは、『気象病』について批判しました。医学系の方々は物理学に疎すぎて、時々とんでもない勘違いをすることがあります。
今回も、本当の先端医学では全く問題にもしていないことではあるかと思うのですが、テレビ番組で紹介していた『寒暖差疲労』について、解説し、批判していきたいと思います。
まず『寒暖差疲労』という用語につて、その意味するところの解説を試みたいと思います。ある地方医師会の公式ホームページ上での解説によると、以下のように解説されています。ちょっと長いのですが、そのまま転載します。
気温の寒暖差が大きいことにより、自律神経の働きが乱れ、体が疲れることを「寒暖差疲労」といいます。
気温の変化に伴い、体は体温を一定に保つため自律神経を働かせて皮膚の血管を流れる血液量を調整したり、筋肉で熱を生み出したり、発汗して体温を下げたりします。
気温差が大きいと自律神経が過剰に働き、大きなエネルギーを消耗して疲労が蓄積し、肩こりや頭痛、めまい、倦怠感(けんたいかん)、便秘、下痢(げり)、不眠などの様々な心身の不調をもたらします。
慢性化すると、わずかな気温差でも不調を感じやすくなります。
となっています。まず差し当たって、明確にしなければいけないのは、「疲労」、「自律神経の働き」といった用語の定義と言いますか、意味について明確にしないと、全文が意味不明になってしまいます。
「身体が疲れる」という意味が、『物理的にエネルギーを消耗しすぎて、自己の意思に従って、身体(骨格筋)を十分に動かせなくなってしまう状況』であるとは、とても考えられません。
これは、長期遭難者等にのみ現れる状態です。
ですから、気力が出ない、やる気が失せてしまっている状態であり、身体的にもだるさなどの倦怠感を感じる状態のことと言って差し支えないでしょう。
次に『自律神経の働きが乱れる』ということについて、きちんと整理してみたいと思います。
自律神経の働きと乱れ?
前述の医師会の見解によると「気温差が大きいと自律神経が過剰に働き、大きなエネルギーを消耗して疲労が蓄積し…」となっている訳ですが、そのエネルギーを消費する原因としては、「皮膚の血管を流れる血液量を調整したり、筋肉で熱を生み出したり、発汗して」としていますが、自律神経自体の活動も、末梢動脈血管収縮のための筋肉作動、発汗といったことも、ほとんどエネルギー消費には結び付きません。
もちろん、筋肉運動はストレートにエネルギーを消費しますが、猛暑の中での身体がぐったりするような状態で、運動、肉体をせざるを得ない環境、状況という人は、この『寒暖差疲労』を問題とする人々とは全く別であると考えるべきでしょう。
多くの人が、昔と違って、しもやけが出来るほど(これには栄養の問題もあります)の寒さにさらされ続けたり、一晩中眠れたのやら、眠れなかったのやら、といったような熱帯夜を過ごすことも無くなっています。
我々世代のように、こういった経験を若いうちにせざるを得なかった人は、それなりに適応力を供えたかと思われるのですが、生まれながらに冷暖房完備といった環境で育ってきた世代は、そういった環境に対する適応が十分ではないのかも知れません。
とくに、いくら冷暖房完備とはいっても、一日中室内で過ごすわけにもいきませんから、外出時や帰宅時等に、冷房、猛暑の短時間における繰り返しには適応しきれないのでしょう。
何てことはありません。もったいぶって『寒暖差疲労』などという新しい名称をもらったものの、ひと昔前の『冷房病』のことのようです。
北海道等で真冬の季節に、屋外と暖かい屋内を頻繁に出入りしたとしても『寒暖差疲労』を起こしたなどという話は聞いたことがありません。
こういった、旧知の状態に新しい症状名や病名を付けて、マスコミ等が喧伝するときは要注意です。
便乗して栄養剤の宣伝が増えるくらいなら可愛いもんで、実害もほとんどありませんが、自律神経の働きを正常化するなどと言って、脳内分泌物質に影響を及ぼすような医薬品の使用などに、絶対に結び付けられることのないように注意しなければなりません。
今や、『医は算術』ではなくて、完全に『薬は算術』といった状況になってしまいました。
解決法
西式健康法としては、『温冷浴を推奨』の一言に尽きるのですが、まず、『寒暖差疲労』について言及している、前述の医師会ホームページにおける記事をご紹介します。
日常生活に適度な寒暖のリズムを作り、自律神経をトレーニングすることが大切。
例えば、気温の高い昼は換気で外気を取り入れることで身体を冷やす、逆に気温の低い夜は温かい飲み物を飲むことで身体を温めるなどして、1日の中で意識的に寒暖差をつけることが自律神経のトレーニングになります。
この際、急激に身体を冷やしたり温めたりすると逆効果になるので注意しましょう。
といった見解もあります。まるで、『温冷浴』に焦点を当てたような意図的な注意書き(下線部)が目を引きますが、だいたい、外気を取り入れるだけで涼しさを感じるような季節なら、『寒暖差疲労』など全く問題にはならないはずですし、暖かい飲み物を飲んで体を温めると自律神経のトレーニングになる、などといった、一般的な漢方的、陰陽理論的な対策を医師会のホームページに掲載するなど、信じ難いことです。
それ以降も、
自律神経を整えるには、①身体の局所(筋肉や内臓)を温める ②散歩などの運動をする ③首肩の筋肉をストレッチする ④身体を温める食べ物を多くとる ⑤規則正しい生活(適度な睡眠と朝に太陽の光を浴びること)⑥38~41度の湯に首までつかり体の芯まで温め、自律神経の集まっている首を温めることです。自律神経は首だけではなく、耳の周りにも集中しています。耳をつまんで前後に回したりすることも自律神経の働きを整えるのに有効です。
といったような記述が続いています。
一時流行した、身体を温めれば万事解決、万病退散といった内容に、指圧ツボ療法的な見解を加えたようなもので、健康雑誌が何十年か前によく取り上げてきたような内容です。
もちろん、こういった刊行物の多くは、制作、編集プロダクションに丸投げであって、医師会の理事会も担当理事も内容的には、ほぼノータッチの丸投げということであろうかとは思いますが、一応は管理すべきです。
医師会ともあろうものが、こういった明らかに科学性に欠け、誤った漢方的見解に偏った記事内容を掲載することは極めて好ましくありません。
温冷浴はなぜ逆効果?
話を戻しますが、なぜ、温冷浴のように急激に大きな温度差刺激を与えることが逆効果なのかということは、全く説明されていませんが、それでも、医師会の公式ホームページに掲載されているのであるから、一理あるかも知れない、という人も出るでしょう。
たぶん、急激な刺激は、心臓に負担をかけ、末梢動脈血管の急激な収縮によって、血圧の急上昇が起こることが懸念される、といったようなことなのでしょう。
西式健康法における『温冷浴』の実践法は、もちろん、最も有効で効果の大きい実践法をご紹介していますから、いろいろな身体的な問題を抱えている人でも、その通りにしなければならない、そうしないと効かない、という訳ではまったくありません。
詳しい内容は、代表ブログ「温冷浴」皮膚01をご参照ください。
その他の原因
このことにつきましても、代表ブログ「食塩について」栄養01、をご参照いただきたいのですが、多量の発汗と水分摂取の繰り返しで、基本的な食塩不足に陥っているということも結構有りがちなことです。
何と言っても、最近では“『食塩』イコール悪者”といった風潮が主流になっていまして、とにかく食塩(Nacl)を避けたり、代用塩を用いる風潮が強くなっています。
しかし、細胞内外への各々物質出入りを順調に行うための理想的浸透圧差を決定する、最大要素は食塩です。
食塩が不足するということは、細胞の働きが低下することとイコールですから、適切な食塩の摂取も、寒暖差疲労防止、軽減にとっては非常に重要なことであるということも忘れないでいただきたいと思います。
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