「ディオバン」という商品名の降圧薬(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)の架空効能(同種の薬剤の中でも「ディオバン」だけには心血管疾患等も予防する効果があるとする架空の臨床データに基づく効能)に関する薬事法違反事件で、ノバルティスファーマ社(ノバルティス社=本社スイス=の日本法人)及びその直接当事者(実際に、意図的にデータ操作を行ったとされている)である同社の元幹部社員に対して、3月16日に東京地裁は無罪判決を言い渡しました。
判決文の内容は、意図的なデータ操作があったことは認定したものの、つまり、実質的な捏造データーが使用されたという事実認定をしながらも、薬機法で定めるところの広告規制には違反しているとは言えないから「無罪」という判決です。
インチキして大儲けはしたけど法令違反はなかったという、とても心情的には納得のできない判決でしたが、法理論上は正しい判決と言わざるを得ません。
広告とは広く大勢の人に伝える行為のことであって、特定の人に伝える学会発表の元データが捏造であったとしても、当時の薬事法で定めるところの広告規制に違反するものではないという判決です。まさに法理論上はその通りです。
この判決による最大の社会的影響は、どんな手段、仮に完全にデータ操作、捏造データに基づく研究結果発表であろうと、学会発表の内容を臨床医等に示すという行為であれば、法令違反に問われないという判例になってしまったことです。
これでは逆に、捏造データを使わなければ損する、これからはやり放題という、極めて悪しき判例となってしまいましたが、これは裁判官が責められるべきことでは絶対になく、法律の不備を問うべきです。
これをそのまま放置すれば、ますます、ただただお金、研究費欲しさのインチキ研究の横行を奨励することになりかねません。
東京地検は一応控訴したとのことですが、この手の問題の再発を防ぐためには法律の改正をする以外にはありません。
次の選挙で、どの政党が薬機法の改正問題を取り上げてくれるかということに注目したいとは思いますが、東京地検が控訴してしまったがために逆に立法府としての対応は遅れることになるでしょう。司法判断を見極めてから、といった口実になりますから。
そして、控訴審の判決が出る頃には、誰もこの問題には関心を持つこともなく、ほとんどマスコミでも取り上げられないまま、結局は何も変化は起きず、捏造データだけは堂々と使用され続けることになってしまうのでしょう。
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