西式健康法

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水酸化マグネシウム剤について | 栄養05

約9分

本ホームページの『西式健康法とは』の下部に『日々の西式健康法』という項目があり、その「食事法」という項目の最下段に「スイマグ」という項目があります。そこでも概略については説明してありますが、より詳しく解説します。

「スイマグ」というのは、本文中の解説にもありますように、株式会社 三保製薬研究所が製造する「水酸化マグネシウム剤」の製品名です。

一般的な薬剤名としては、表題のように「水酸化マグネシウム剤」であり、今日の医薬品の分類では「寫下剤」に分類されます。

「寫下剤」とは、一般的には「便秘薬」、「下剤」と呼ばれる医薬品の、今日の正式な薬剤分類名なのだそうで、以前は作用が比較的穏やかな下剤を「緩下剤」、作用が強い下剤のことを「峻下薬」と呼んでいました。

水酸化マグネシウム剤は「緩下剤」でした。

下剤、便秘薬の薬理作用

下剤の薬理作用には二つの異なる系統があり、ひとつは「スイマグ」も含まれる「機械的下剤」であり、もうひとつが、「刺激性下剤」と呼ばれるグループです。

ただ、この分類の仕方は必ずしも的確であるとは言えないのではないかと思います。前者は「物理作用下剤」であり、後者は「化学作用下剤」と分類するのがより正確でしょう。

どういう意味かと言いますと、私が「物理的作用」とした薬剤の薬理作用は、浸透圧調整作用というべき、消化吸収を行っている生理、物理作用に影響を与えるものだからです。

 

なお、もうひとつ物理的作用としては「膨張性下剤」という、腸管内で水分を吸収して膨張することによって排便を促すというタイプの下剤もありますが、本稿では解説を省略します。

「化学的作用」とは、作用する部位は各種ありますが、基本的に、神経系に刺激を与えることによって強制的に大腸筋肉、直腸括約筋の収縮運動を促すタイプの薬剤です。

例えば漢方便秘薬と呼ばれる、比較的穏やかな化学的作用による下剤であっても、最大の問題点は、習慣性が生じ、反応(効き)が悪くなってくるために、安易に依存し続けると服薬量を増量していかざるを得なくなることです。

ほとんどの薬剤、便秘薬以外でもこういった傾向は生じますが、体内で産生しているホルモン様物質に類似した化学構造式をもつ物質を摂取すると、一応その命令には従ってしまうことがあります。これが薬草などを含む薬剤の薬理作用です。

しかし、一方で、薬剤を摂取したことよる作用、反応に対しては、自ら産生した物質による結果ではないことに、本能は気付きます。

 

そういった状況が続くと、本能はそれに対抗、拮抗するホルモン用物質を増産します。何とか本能自らが目標とした設定値に戻そうとする結果です。

 

服用している薬剤と自らが分泌しているホルモン様物質の綱引き状態が続くわけで、片方が突然綱から手を離せば、どどっと勢いあまって一気に引き続けていた側が後ろにひっくり返ってしまいます。

この現象が、薬剤服用を中止した際に生じる、いわゆる「リバウンド」です。このリバウンドは便秘薬でも当然生じるわけで、連用すると便秘傾向がより強くなってしまうことが多いのです。

消化吸収の仕組み

水酸化マグネシウム剤は、薬理作用的にまったく習慣性が生じない、というのが最大の特徴です。

そのことについて理解していただくためには、消化吸収という生理作用の基本を知っていただく必要があります。

食べ物は、そのまま生物の血中に入ってくるわけではありません。例えばたんぱく質がそのまま血中に入ってきてしまったら、免疫能は摂食した食物と細菌の区別もつかなくなってしまいますから、免疫システムそのものが成立しないことになってしまいます。

もちろん、生物は生存できません。他生物の酵素がそのまま血中に入ってきたら大変なことにななってしまうのです。(ブログ14『「酵素」って何?』をご参照ください)

たんぱく質は必ずアミノ酸、若しくはアミノ酸がアミノ結合した「ペプチド」の状態に分解し(消化)なければ血中には入ってこれません。そういう仕組みになっているのです。

 

でんぷん質は「ブドウ糖」に分解してから吸収する仕組みですし、脂肪は脂肪酸という水に溶解する単位にまで分解して吸収、つまり血中に取り入れることができるようになるのです。

ではそういった単位に分解したアミノ酸等を、どういう仕組みで血中(主として小腸絨毛内の毛細血管)に取り入れるのかというと、完全には説明し切れていない分野ではありますが、一応「浸透圧」という物理作用によって、自然と血中に入ってくるようになっています。

いろいろな消化液が加わり、食物が分解されて、消化途中のどろどろの粥状の液体と、前出の小腸絨毛内の毛細血管の血液との間の「浸透圧勾配」によって、自然に血中に入ってくるようになっています。

 

基本的には浸透圧勾配を利用していますから、すべての消化された物質(食物)は液体に溶けている必要があります。お米は水に溶けることはないけれども、ブドウ糖は水に完全に溶けるということです。

水酸化マグネシウム剤の薬理作用

 水酸化マグネシウム剤は、胃酸等と反応して、塩化マグネシウム→重炭酸マグネシウムと化学変化を起こし、消化途中の食物と混ざって、前述の浸透圧勾配を変えてしまいます。

本来であれば、アミノ酸等は消化液(実際はほとんどが水分)と共に小腸から血中に吸収されることになるのですが、水酸化マグネシウムが混じっている部分(実際は重炭酸マグネシウム)は、浸透圧勾配が逆転してしまい、消化中の食物は小腸から吸収されず、十分な水分を含んだまま、その先へと流れていくことになります。

大腸まで届いても、この浸透圧の逆転作用は続き、便の水分含有量は高いままですから、直腸括約筋に大きな力を加えなくても容易に排便ができる、という作用です。

この作用は、脱水作用を起させるほど強くはないので、全身が水分不足に近い状態だと水分吸収を抑制し切れませんので、作用が弱くなってしまいます。

十分に効果を得たかったら、相応の水も摂るように心がけないと効き目が弱くなってしまうということでもあります。

水と一緒に、各種栄養素も吸収されないまま排泄されてしまいますから、効能効果としてはまったく表示されてはいませんが、ある程度のダイエット効果も期待できることになります。

メリーポピンズと下剤

 最近リメイクされた「メリー・ポピンズ」というディズニープロダクションの名作ミュージカル映画があります。オリジナル版が日本で公開されたのは1965年のことだそうです。主演は、ジュリー・アンドリュースとディック・ヴァン・ダイクです。

この、映画の時代背景は1910年のロンドンということになっていて、当時の上流階級であったバンクス家(と言っても銀行員で、貴族ではない)では、当然のようにナニー(日本語では乳母と訳されることが多いが、別に乳児専門の世話係というわけではなく、当時の英国上流階級では一般的であった、未就学児童の世話係専任の女中さん)を雇っていました。

子供たちがかなり腕白なものですから、ナニーが定着せず、募集を掛けた際に魔法の国から来てナニーになったのがメリー・ポピンズです。

そのナニーを募集するに当たって、子供たちがどのようなナニーに来て欲しいかという要望の手紙を父親に渡すのですが、その中には、一緒に遊んでくれる人であるとか、ピンクの頬でイボのない人といったような内容が列記されています。

そして、その中に、「Never give us castor oil or gruel」(ネバー ギブ アス カスターオイル アンド グルー)というフレーズが出てきます。これは、「私たちにひまし油や粥を絶対に飲ませたり、食べさせない人」という意味です。

「ひまし油」は当時の家庭常備薬だった下剤でしたし、ここで言ってる「粥」は、病人、老人専用と言っても良い、オートミールの薄い粥のことなのだそうです。たぶん、まったく美味しくはないが、お腹などを壊したときなどには、当時の理想とされてきた重湯のような感覚の食事であったようです。

この誰もが飲むのを嫌がる、死ぬほどまずくて激しい下痢をしてしまうことが多かった「ひまし油(castor oil)」が19世紀の便秘薬の圧倒的な主流であって、それに変わって登場したのが「水酸化マグネシウム剤(英名は「Milk of Magnesia」)でした。

この「ミルクオブマグネシア」は、1885年頃にイギリスで発明、製造が始められたようですが、普及するに従って欧米家庭の薬品棚からひまし油を駆逐し、欧米における下剤の主役の座に付いたのが、「フィリップス」ブランドの水酸化マグネシウム剤、「Phillips’ Milk of Magnesia」です。 

なお、メリーポピンズの時代考証は多少甘いところがある様な気がします。1910年にはすでに多くの家庭、すくなくとも英国においては、ミルクオブマグネシアに切り替えられていたたものと推察されます。

ひょっとすると、お仕置き用に両剤共に置いていた家庭もあったのかもしれません。

なお、紆余曲折を経て、フィリップス一族の手を離れたフィリップス・ミルクオブマグネシアは、現在ではバイエル社によって製造が続けられており、今日でも、とりあえず便秘をした際の第一選択薬として多くの家庭に常備されています。

日本ではまったく普及しなかった

 水酸化マグネシウム剤

 日本で水酸化マグネシウム剤の普及を図った張本人が、実は西式健康法創始者 西勝造先生なのです。

1918年を中心にほぼ丸1年、地下鉄設計準備のために米国留学をしていた学祖西勝造先生は、米国滞在中にこのすばらしい副作用のまったくない便秘薬にほれ込み、帰国後しばらくたって東京市の技師職を退職したあと、知り合いの実業家に働きかけてこの水酸化マグネシウムを製造する会社を立ち上げました。

欧米の普及の広がり方を見れば、確実に成功するのは間違いがないビジネスであったはずなのですが、残念ながら日本ではあまり売れずに、太平洋戦争中に製造会社は清算することになってしまいました。

当時の日本の医学会に対しことごとく異を唱えていた、「西勝造の推薦する薬など、意地でも使わない」という雰囲気が、当時の医学界、薬学会に実際に存在したようです。

もちろん、日本人の体質には合わないなどという、馬鹿げたことがあるわけもなく、聖路加国際病院の院長、名誉院長を長年にわたって勤められ、2017年に105歳でお亡くなりになった日野原重明先生は、「入院患者が便秘したら、第一選択薬は水酸化マグネシウム剤が常識」ということをおっしゃっていたとのことです。

そういうわけで、あまり売れないからという理由で、水酸化マグネシウム剤を製造している会社は日本では少ないのですが、西勝造先生存命中に西勝造先生から直接製法指導を受け、製造を依頼されたのが、現在も日本で水酸化マグネシウム剤を製造している数少ない製薬会社のひとつである、株式会社三保製薬研究所です。

欧米では、ミルクオブマグネシアを置いていない薬局は皆無であると断言できます。海外渡航で欧米に行かれる機会がありましたら、ぜひ一度薬局を覗いてみてください。私の申し上げていることがウソでないことがすぐにお解りいただけます。

 

欧米先進国では130年以上の歴史を有し、最も副作用の少ない便秘薬として、mっ友普及しているのが水酸化マグネシウム剤(日本における製品名は『スイマグ』等)です。

 

便秘が気になる方は一度お試しください。

なお、一般の薬局、薬店では置いている店が非常に少ないので、購入方法がお解かりにならない方は私ども西会本部にお問い合わせいただくか、三保製薬研究所のホームページからでも注文可能です。

 

この記事を書いた人

株式会社 西式サービス西会 本部長西 万二郎
昭和27年(1952年)東京生まれ。東京工業大学工学部付属工業高校機械科を経て立教大学社会学部卒業。西式健康法創始者、西勝造の次男・西大助(西式健康法普及団体、西会第三会長、故人)次男として生まれ、在学中より西式健康法西会本部に勤務し西式健康法普及活動を開始。昭和52年業務部長、昭和63年本部長に就任。主な著書に『西式健康法入門』(平河出版社刊、共著)がある

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