西式健康法

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皮膚機能と裸療法 | 皮膚03

約8分

前号ブログ「エクリン汗腺」で、その機能仮説について自説を展開させていただきましたが、もう少し続けます。

不感蒸散(不感蒸泄)

 エクリン汗腺は毛細血管と直結しています。エクリン汗腺から汗が汗孔に達し、汗孔から蒸散する際には植物と同様に蒸散作用による、一種吸引力が発生することになります。

 

また、不感蒸散という現象も広く知られています。私はちょっと疑問を持ってはいるのですが、汗腺だけでなく皮膚表面等、つまり個々の細胞表面からも絶え間なく水分は蒸散していることになっていまして、安静時であっても呼気からは300㏄/日、皮膚表面からは600㏄/日が蒸散、放出されていることになっています。

呼気中の水蒸気に関しては日常的にだれもが認識していますから疑問の余地はありませんし、肺胞や気管支表面は粘膜であり常に湿潤状態ですから当然の現象といえますが、一般の皮膚表面から600㏄/日ということに関しては、本当かな?、と私は疑ってます。

実測するに当たって、汗腺からの蒸散分と皮膚細胞表面からの直接蒸散分を分けて計測する方法が存在しないのではないかと思うからです。

それはさておいて、皮膚細胞表面からの水分直接蒸散が事実であるとしても、個々の真皮細胞に対する水分供給は、当然ですがもともとは血液であった「間質液」(細胞間を満たしている水分)以外にありません。

個々の細胞が、栄養成分等と一緒に細胞内に取り込んだ水分が、最終的に細胞表面から直接蒸散していくわけで、その事実によっても細胞が乾燥してしまわないということは、間質液が細胞に吸引されているということです。

つまり、浸透圧以外の原理によっても、間質液中の水分は細胞に吸収されていることになり、細胞と同様、間質液が枯渇することがないように、血液も不感蒸泄によって毛細血管外に吸い出されていくことになります。

飲水量との関係

肥満体で体表面積が広ければ(汗腺数と違い、皮膚表面積は肥満に合わせて皮膚細胞数が増加すると同時に増加しますし、一般的に呼吸空気量も増大するはずです)、1リットル/日以上ということにもなるでしょう。

なるほど、この概念がいきわたった結果として、医学界における水分摂取推奨量がここ十年ほどで著しく増加したのかもしれません。

10~20年か前までは、1日1升(1.8ℓ)、2升などという飲水量は多すぎるなどと言われていましたが、現在では多くの医師が最低でも日量1.5ℓ というようになってきました。

暖かい季節の通常の発汗量を考慮すると、1日1升、2升という西式健康法による推奨量は、至極妥当なものであったということになります。

ただし、言うまでもないことですが、一気飲みは好ましくありません。理想的なペースは点滴のような水分補給であって、西式健康法では1分1グラム主義と言っています。

これは発汗分に対しては特段の考慮はしない場合の量ですから、発汗分は上乗せしていただきたいですし、夜間水分補給ができなかった分は、朝、やや多めに多回数に分けて飲むのが良いということになります。

裸療法

 西式健康法関連の、何らかの書籍を読まれたことのあるならご存知と思いますが、西式健康法には「裸療法」とか「風療法」あるいは「大気療法」と称する療法があります。

どんな療法かといいますと、全身を大気に曝す裸体の状態とタオルケットや毛布などを体に掛けて全身を覆うことを、少しずつ時間を変えながら繰り返す療法です。

 

なお、してはいけないということではありませんが、通常は頭部、顔面まで覆うことはしません。

また、できるだけ全身に影響を与えたいので、基本的に裸体状態とは全裸が理想であり、皮膚をできるだけ大気に曝せるように、皮膚との接触面積が少なくなるように椅子等に腰掛けて実施するのが理想です。

最初は20秒間裸体になり、次に1分間毛布等をまといます(着衣)。次は30秒裸体となってからまた1分間着衣、さらにその次は40秒裸体、1分間着衣といった具合に徐々に時間を延長していきます。(表をご参照ください)

回数 裸体時間 着衣時間
1 20秒 1分
2 30秒 1分
3 40秒 1分
4 50秒 1分
5 60秒 1分30秒
6 70秒 1分30秒
7 80秒 1分30秒
8 90秒 2分
9 100秒 2分
10 110秒 2分
11 120秒 随時安静に

最初から全行程を実施するのではなく、1日目は裸体70秒まで、2日目は裸体80秒まで、3日目は裸体90秒までといった具合に徐々に延長し、全行程を実施するのは6日目からという指示内容になっています。

効能、効果

西式の書籍では「皮膚呼吸をつけることによって、体内の一酸化炭素等の有毒ガスを排泄し、酸素の補給を行う」とされていますが、この説明は明らかに誤りです。

 

皮膚には呼吸に当たる作用を生じさせる構造は存在しませんし、汗腺以外には排泄に類したことを行う構造にもなっていません。

強いて言えば、汗に混じって排泄される可能性のある微量の二酸化炭素のことを指して「呼吸」と言えないこともないかもしれませんが、皮膚は普通で言うところの呼吸はしていません。

 

当時は、原理は分らないが『経験的に絶大な効果があるから、とにかく理屈を無理矢理こじつけた』というようなことなのでしょう。

そこで、前半部分を思い出していただきたいのですが、汗腺等からの水分排泄は抹消体液(毛細血管中の血液や間質液)の吸引の原動力となっていますから、抹消血液循環を促進させるためには発汗を旺盛にしてやることがとても重要です。

 

運動をすれば、だれでも発汗は促進されますが、心拍数は自動的に増大してしまいますし、交感神経の亢進も避けられません。病人にとっては好ましくない状況です。

ドライサウナ、スチームサウナ等の、水圧のかからない体を暖める温浴法も発汗はかなり促進してくれますが、体温上昇と心拍数増加による交感神経亢進は避けられないでしょう。

なお、一般の温浴は水面下20cm より深部では発汗が行われません。汗腺からの水排出圧は毛細血管圧(15mmHg≒20cmH2O)以上にはなり得ませんから、体温上昇は起こすものの発汗量はそれほど多くはなりません。

通常の温浴中より、ドライサウナ入浴中の方が脳血管疾患発症率がはるかに高い、という印象があるのも、単に印象の問題ではなくこういったことが関係しているのではないかと思われます。

心拍数の増大なしに、過大な発汗を生じることなしに、抹消の血液循環のみを促進することができる唯一の方法が、この『裸療法』です。

 

裸になったり、毛布をかぶったりの繰り返しくらいで病気が治るなら『こんな簡単なことはないし、医者も要らないじゃないか』と決め付けてしまう前に、一度お試しいただいても良いのではないでしょうか。

なお、裸体時間と着衣時間がややこしく変化させていかなくてはならない理由としては、発汗に対するヒトの環境適応を起させないためと考えられます。

あらゆる生物にとって、水は絶対に必要でもっとも重要と言っても良い構成要素です。「エクリン汗腺」の中で解説したように、過剰な熱放散の主力は発汗ではなく熱放射です。

熱放射でも体温調整が可能であれば、重要な水分を失ってしまう体温調整のための過剰発汗を本能は望んではいません。

 

危険なレベルの高温環境に長時間曝される(サウナのように)と、体温を維持するためにやむを得ず最大限の発汗を続けますが、他の方法でも体温調整が可能な範囲内(裸療法実施中のように)であれば、無意味に水分を失うような種類の発汗は抑制してくれます。

ずっと毛布をかぶっていると、発汗は促進されるようにみえますが、生命を守るための発汗抑制指令も自動的に発動されてしまいます。

せっかく、毛布をかぶって穏やかに体を暖めても、その環境を本能が認識してしまったとたんに発汗量は自然と低下してしまうのです。

それでは、せっかくの抹消循環促進作用がどんどん低下してしまいますから、常に、最大限に近い発汗量を維持させるために、裸体と着衣の時間を変化させていくのです。

そういった理由ですから、時間表で指示されているほど厳密にコントロールする必要もないと考えられます。

裸体30秒、着衣60秒を数回繰り返し、次に裸体60秒、着衣90秒を数回、といったようなインターバルであっても、効果にはほとんど差異はなかろうと考えられます。

最後に温度加減ですが、着衣中、玉の汗になって汗腺を塞いでしまうと蒸散効率が低下してしまいます。

 

裸体時間に強く寒さを感じるようでは、発汗が止まってしまいます。着衣中は体が温かく気持ちの良い状態、裸体中は汗ばんだ状態から開放され、涼しくて気持ちが良い状態、これを繰り返せるように環境を調整し、工夫してください。

現代は、昔と違ってクライメイト・コントロール(気候調整)が多くの方にとって可能となっています。エアコンや扇風機を上手に使って最大限の水分蒸散量となるよう工夫してみてください。

もうひとつ、最後のご注意ですが、『裸体中は窓を開け放つこと』となっていますが、これは裸体中に皮膚から一酸化炭素等が排出されるから、という理由ですから実際は不要です。

とくに、冬季に窓を開けてしまったがために、体がガタガタ震えてしまうようであれば、本末転倒ということになります。

ただ、湿度の上昇が生じるようであると蒸散高率は低下してしまいますから、エアコンを除湿モードにして実施する等の工夫をしてみてください。

この記事を書いた人

株式会社 西式サービス西会 本部長西 万二郎
昭和27年(1952年)東京生まれ。東京工業大学工学部付属工業高校機械科を経て立教大学社会学部卒業。西式健康法創始者、西勝造の次男・西大助(西式健康法普及団体、西会第三会長、故人)次男として生まれ、在学中より西式健康法西会本部に勤務し西式健康法普及活動を開始。昭和52年業務部長、昭和63年本部長に就任。主な著書に『西式健康法入門』(平河出版社刊、共著)がある

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