西式健康法

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温冷浴 | 皮膚01

約8分

おそらく西式健康法の各種療法、特殊療法の中で、最も実践者数が多いのではないかと思われるのが「温冷浴」です。

まず最初に、温冷浴に期待している作用、効果から説明します。

一応の健康体であれば、体に悪影響を及ばす恐れが無い範囲内でのもっとも強い寒冷刺激(冷浴)と、それを短時間で解除する温暖刺激(温浴)を繰り返し、常に自律神経の適切な働き、反応が生じるように訓練、練習をすることを目的とした療法です。

四季が存在する地域では、自然環境が季節によって各々刺激を与えてくれるので、野生動物が一切トレーニングをする必要がないのと同様、本来の野生の人?であれば、人工的に刺激を加えてまで訓練する必要もないのですが、常に衣服を着用し、ここ20~30年、どこへ行っても「冷暖房完備が常識」という環境下で暮らしていますと、そうもいかなくなってきます。

現代の標準的生活を甘受していると、そういった訓練に相当する自然の刺激を受ける機会が激減してしまったということです。

そういう時代なんだから、わざわざ辛い思いをしなくても別に良いんじゃないの?とお考えになるかもしれませんが、そうはいきません。

なぜなら、そういった刺激に反応して心拍数、主要動脈の収縮だけでなく、抹消の細動脈の収縮までが、すべて自律神経によってコントロールされているからです。

例えば、緊張してくると、心拍数が上昇してきます。発表会等で自分の順番が迫ってくるにしたがって心臓がドキドキしてくる状態です。この場合、単に心拍数が上昇しただけでなく、すべての動脈血管を構成する筋肉(細動脈においては巻きついた筋肉)が収縮します。

血圧というものは、動脈血管内に存在する瞬間瞬間の血液量で決定されますから、血液が多く存在すれば、動脈壁を押す圧力は高くなるし、逆に大量出血などで血液の絶対量が著しく減少すれば、圧力もゼロ=測定不能、になるというわけです。

ですから、肥満体の人は体重増加に応じて血液量が増大するものの、主要動脈自体の内容積はほとんど増えませんから、自然と血圧が高くなってきますし、肥満していた人は痩せるに従って自然と血圧が下がってくるのが当然、というわけです。

ではなぜ、そういった一連の反応が生じるのかということですが、恐怖感、不安感を感じると交感神経亢進状態となり、心拍数増加等の一連の反応が生じます。

野性の世界では、恐怖を感じたり不安な気持ちに支配されている状態とは、死が現実の問題として目の前に存在している状態です。

恐怖を感じるということは、目の前に自己の生命を奪いかねない状況が実際に存在するということですし、不安な気持ちを抱き続けるという状態は、眼前にそういった存在を認識しているわけではないが、暗い森の中を一人、もしくは少人数で歩いているようなときに「熊が出たら困るな」と考えながら歩いているような状況です。

不安が現実となったとき、つまり、実際に熊と出くわしてしまったとき、突然必要となる全力疾走、あるいは敵わないながらも全身の筋力を最大限に発揮して、戦おうとしたときに、絶対に脳貧血だけは起さないようにしておくための準備動作が心臓ドキドキ、血圧上昇の原因であるということです。(ブログ006「背腹運動」とブログ009「自律神経と酸塩基平衡」も併せてお読みください)

ストレスに強い体

最近、恐ろしい無差別殺人的な事件が多発しているといった感がありますが、現代社会においては、突然生命を奪われるといった状況は滅多にありません。

事故、災害以外にはそういったことはありえないはずですから、今日の多くの先進国では競技スポーツをするような時以外に、交感神経を過剰に亢進させ続けなければならない状況というものは、まったく必要のない反応であるということになります。

しかし、一方で生存率を向上させるための最も基本的な本能プログラムですから、いくら、「別に命取られるわけじゃない。殺されるわけはない」等と前頭葉の新皮質で考えたとしても、不安な気持ちをいだき続けていると自然とその反応が起こってしまいます。

精神面から、無用な精神的動揺を抑え込む方法が「背腹運動」であり、それでも抑え込みきれない過剰な自律神経反応によって生じる、肉体的な問題を緩和してくれるのが「温冷浴」です。

 いろいろな不安によって、無意味に、過剰に動脈を締めている時間が長いのが現代人の特徴ですが、実際は単に血管を締め付けるだけでなく、交感神経が継続的に亢進してしまっていますから、副交感神経が最も優位になるべき睡眠も十分に取れなくなってきます。

そういった中で、抗不安薬、坑うつ薬、睡眠導入剤等を用いて脳内微量分泌物をいじくり回すことは最悪です。

 

不安要因が減少し、本来なら交感神経亢進を緩めても良い状態になったにもかかわらず、自律神経コントロールがうまくできないが故に、無意味な交感神経亢進状態に陥っている人が現在社会では多数派になってしまっているというわけです。

外部刺激に対して正しい、適切な反応を起すことができないがために、血液分配も適切に行えなくなってしまうということであり、これがストレスによる肉体被害の最大の要因であると考えられます。

 

冷水の冷たい刺激によって、瞬時に交感神経の亢進を生じさせ、その指令によって抹消の細動脈血管が収縮し、若干心拍数も増加します。

これは無用な体温低下(無駄なエネルギー損失)を生じさせない、つまりは、低体温による生存可能率低下をを生じにくくする目的の反応です。

このままでは、現代人の生活そのもので何一つ良いことはないわけですが、冷水に浸かったことによる具体的な問題、障害が生じる前に、湯に浸かって交感神経亢進を緩め、一定時間内に温浴が気持ちよくて、次の冷水浴は止めておこうかと思うくらい気持ちの良い状態(副交感神経亢進状態)を起してやります。

さらにもう一度、水に浸かって、湯に入って、水に浸かって、湯に入ってということを数回繰り返します。

つまり、極めて短時間のうちに四季を体に体験させて、状況に応じた適切な血流配分を瞬時に行えるようにするための訓練法が「温冷浴」というわけです。

最近激増している「逆流性食道炎」等、自律神経失調が最大の原因である諸症状に対して、劇的ともいえる効果を発揮します。

温冷浴実施に当たって

 あまり詳しく説明しているスペースは無いのですが、基本的には冷水浴から始め、冷水浴で終えます。

合計で7回(冷→温→冷→温→冷→温→冷)あるいは9回(冷→温→冷→温→冷→温→冷→温→冷)実施してください。11回は多すぎると学祖西勝造先生の文献にも明記されています。

回数を増やせば増やすほど有効(とくにある程度辛いことであればあるほど)であるように思い込みがちですが、そうではありません。

常に正しい反応を起せるようにするための訓練、鍛錬法ですから、やればやるほど効果が大きい、といった性質のものではありません。

このような状況は、自然環境化においては絶対に起こることがない正反対の強い刺激の繰り返しであり、人によると自律神経の反応が追いつかなくなってくることがあります。

つまり、11回~15回、あるいはそれ以上とやりすぎると、本来なら絶対避けなければならない、人によっては脳貧血を起してしまうことがあります。浴場での転倒、失神は大変危険ですから、回数は指示された範囲内で実施してください。

温冷浴を実施するには冷水槽と通常の浴槽が必要になりますが、今日では、浴室を拡張し冷水槽を設置するということはまず無理でしょう。とくに都会では相当経済的に恵まれた方であっても極めて困難です。

そこで、昔から代用法として冷水はホースで足から順に掛けていくなり、手桶のようなもので掛けていっても良いとなっていますので、どうしても冷水をシャワーでという発想になりますが、今日では浴槽に冷水を溜めて、温水シャワーを利用したほうがずっと実行しやすいということは、ブログの013「時代背景」でご紹介しました。

今日はもう一歩進んで、そういった代用法の細かい実施のコツについてご説明します。

夏場になると原水温がうんと高くなってしまいます。最近の建築物であれば、集合住宅であっても地下受水槽が主流ですから、昔の団地のように水道の水温が30℃近くになるということはまずないかと思われますが、それでも26℃やそこらにはなってしまう場合があります。

そういったときは各々の入浴時間で、かなり調整可能です。水槽の水温が25℃未満であれば、刺激としては決して強くはありませんが、それでも入浴時間を調整、延長することによってかなりの効果を得られます。

基本的には体が震えそうになるまでということになりますが、25℃未満であれば水浴を1分30秒くらいまで延長することによって、かなりいけます。

それ以上の水温になってしまったら、それこそ冷水シャワー(浴槽に普通に湯を入れて)を浴び、流水によって体感温度が下がるとう現象を利用することにより、かなり効果的な温冷浴を夏場でも実施できます。

通常サイズの浴槽の場合、特別大柄な方でない限り首まで使って溢れない程度の水量で実施した場合、冷水を入れた浴槽の水温は、最大でも1.5℃程度しか上がりません。

たぶん、ここまで読んでくれた方は、なるほどとは思うが、そんな細かい時間を計るのは大変だし、防水時計を付けたとしても、何秒から始めたか覚えきれない、とお考えになるかもしれませんが解決策はあります。

防水型のキッチンタイマーを使ってください。私は、タニタの「防水キッチンタイマー」というのを使用しています。

最大99分59秒までの設定が可能ですから、1分25秒といった設定も可能です。防水能力もまったく問題はないようで、わざと浴槽に落としてみたり、浮かべて使ってみたりしましたが(もちろん、できるだけ濡らさないようには心がけています)、まったく防水性能には問題はないようです。

 

また、体感温度の利用としては、冷水を浴槽に張った場合には、冷水浴中にシャワーヘッドを浴槽内に入れて水を出しますと、いくらかは温度が低いはずの原水を供給できると同時に、水流の発生による体感温度の低下効果も得られます。

それでも、まだぬるくて困るという方は、凍らせたペットボトルを浴槽に入れて体に当てると冷たい水に浸かったのとほぼ同様な体感温度とすることができます。

各自、住宅環境、気温等を考慮して、最も実行しやすく有効な温冷浴を試してみてください。

この記事を書いた人

株式会社 西式サービス西会 本部長西 万二郎
昭和27年(1952年)東京生まれ。東京工業大学工学部付属工業高校機械科を経て立教大学社会学部卒業。西式健康法創始者、西勝造の次男・西大助(西式健康法普及団体、西会第三会長、故人)次男として生まれ、在学中より西式健康法西会本部に勤務し西式健康法普及活動を開始。昭和52年業務部長、昭和63年本部長に就任。主な著書に『西式健康法入門』(平河出版社刊、共著)がある

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