西式健康法

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最近の医学に対する雑感  考察15

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最近の医学に対する雑感   考察15

感染症分野は落ちこぼれ?舛添元厚労大臣(元東京都知事)の発言が物議 「実効再生産数」、「人流」等耳慣れない用語を耳にすることが多い今日この頃、翻訳医学用語は翻訳がへたくそで無用な混乱

 

 

舛添要一氏の発言

元東京都知事で参議院議員時代には厚生労働大臣も務めた、舛添要一氏のラジオ番組での発言が物議を醸しました。報道によりますと、「感染症の専門家は医学界の落ちこぼれ」という趣旨の発言をしたのだそうで、もう少し詳しく引用しますと、次のように発言したのだそうです。

感染症の人たちは一般的に言って能力が足りない」「医学部の学生をずっと教えていたけれども、(感染症は)人気じゃない。悪いけど落ちこぼれの人たちが行くところ

と発言したのだそうで、それに対して、あまりに失礼、事実と異なる等々相当な非難が寄せられた、とのことです。

私の評価は別な機会に述べさせていただくこととして、具体的に感染症学の異常な感覚について私見を述べさせていただきます。

実行再生産数

ワイドショウ等のテレビ番組をよくご覧になる方ではおなじみの言葉ですし、多くの方々にとっては、『忖度』と同様、生まれて初めて聞いた言葉であったでしょうが、その言葉を知った翌日から、あたかも自分はとっくの昔に知っていましたと言った顔をして使っている方も多いことでしょう。

この言葉は物事を正確に説明する言葉にはなっていませんから、この用語が当初使われるようになった頃は、その都度用語の解説がなされていました。

曰く「一人の患者が、何人に感染させたかという数値(数量)のことであって、1未満なら、患者は減少していっているということですし、1以上になると増加しているということを現しています。数字が大きければ大きいほど感染状況は深刻ということになります」といった解説をお聞きになったことでしょう。

そこで、なぜこういう意味の言葉 に解説が必要になるのか?日本語はせっかく表意文字である中国語(漢字)を採用しているのに、いちいち説明が必要かということを考えてみました。

英語では『Execution reproduction number』と言います。というより、この英語を日本語に翻訳したのが「実行再生産数」です。「Execution」は通常「実行」と訳されることが多いのですが、「達成」、「成就」といった言葉がふさわしい場合もあります。

「number」は「数」ということでだれも異存はないものと思いますが、問題は「reproduction」の訳し方です。
確かに中学生レベルの直訳で、辞書も見なければ、「re」と「production」を合成して、「再・生産」という言葉を充てるかも知れませんが、たぶんその際の採点は○でなく△で、配点の全部はくれないでしょう。厳しい先生なら✖を付けるかも知れません。
この「reproduction」には「生殖」、「繁殖」という訳語が、辞書によってはトップに出てきますし、必ず3~4番目には出てきます。
「再生産」という訳語は出て来ず、再生、複製、複写、複製品といった訳語が出てきます。

つまり、この「実行再生産数」という訳語は明らかに、誤訳と言うべきものでして、実際は、単純に『実質再感染発生数(もしくは率)』とでもすべきであって、わざわざ難解な用語を、仮に意味不明であっても得々と使いたがるのは、未成熟な、言い換えればお粗末な学問分野の常です。

英語圏の人々が英語で『Execution reproduction number』という言葉を聞いたとしても、補説明は全く不要です。
算出方法の詳細、例えば何が分母で何が分子か、期間はどう区切るかといったようなことは尋ねられるかも知れませんが。

というわけで、個々の専門家のレベルが決して低いというつもりは毛頭ありませんが、このような用語を放置して、専門用語と称し、素人に解りにくくしている、という批判はされても致し方ないように思います。

郵便配達夫と販売事務員

 これも以前、英語の生理学書の日本語翻訳版で発見した誤訳なのですが、血液循環に関する記述でした。翻訳をしたのは感染症の専門家ではなく、循環器の専門家(もしくはその弟子、教え子)であったということは、念のため申し添えておきます。

具体的な記述内容は、筋ポンプ作用による下肢静脈血還流機序の説明のところなのですが、『郵便配達夫と比較してデパートの販売事務員は下肢筋ポンプ作用が発現しにくく、静脈血が滞留しやすい(むくみ易い)』といったような記述内容です。

原著(日本語版)は人にあげてしまったので、私の記述は必ずしも原著に忠実とまでは言えないのですが、それを読んでまず私が思ったのは、販売事務員なら、ほぼ椅子に座ってのデスクワークが中心であり、自動車(米国の場合)に乗って郵便物の配達を行う郵便配達夫と比べてもあまり条件は変わらず、比較対象として不適切なのではないか?ということでした。

たぶん(英語原著までは入手しませんでしたので)販売事務員と訳した単語の原文は『Salesclerk』であったのであろう、と思われるのです。

「セールス」と「クラーク」に分解してしまった結果、「販売・事務員」ということにしてしまったのでしょうが、これは『店員』もしくは『売り子』と訳すべきところです。と言うよりそれが常識です。
また、アメリカの都会のビル街で郵便物を配達する郵便局員は徒歩で配達することが普通なのでしょう。

説明するまでもないでしょうが、同じ立ちっぱなしの職業でも、ずっと歩いている郵便配達夫は筋ポンプ作用が発現して下肢静脈血の還流は十分に行われるが、デパートで接客に備えて担当売り場で立ちっぱなしの販売員(売り子)は、殆んど歩かないので、下肢の静脈血が還流しきれず、むくみが生じやすい、という比喩のために出てきた話である、ということです。
分かりやすいはずの例え話が、お粗末な誤訳によってかえって意味不明になってしまったという例です。

外国語の専門書を日本語に翻訳して出版する場合、日本の出版社はその本の権威付けになると考えるのか、医学部のその分野の教授、准教授に依頼することが多いのですが、直接教授らが英和辞書を確認しながら、翻訳作業をしているとはとても考えられません。

もちろん、米国留学経験がある教授、准教授であっても十分な総合英語力を有しているという保証はありませんが。

むしろ、実際は、医局員なのか院生なのか判りませんが、そういった作業は下の人に任せているに決まっています。つまり、名前だけ貸してギャラのほとんどを受け取るが、小説の翻訳ではありませんから、完成翻訳原稿に眼を通すことすらしない可能性もあるのでは?ということです。

私が見つけた不適切な翻訳は、臨床系の専門書ではなく、教科書的な生理学書ですから、仮に誤訳があったとしても実害はほとんどありませんが、臨床系専門書であればと思うとちょっと心配になります。

 餅は餅屋で、専門翻訳家(もっぱら医学系の)に任せておけば絶対に起こらないようなつまらないミスが、日本人が極めて弱い『権威』に依存する、出版社の訳の解らない付加価値戦略によって、コストは嵩むわ、内容は落ちるわという愚をおかしていることになります。

人流

これはついでの内容ですが、最近急に使われる様になった用語として『人流』という単語があります。辞書には出てこない日本語です。
少なくとも、広辞苑(第6版)、明鏡古語辞典(第2版)、いずれも「カシオEX-word, XD-N6100」収録分には出てまいりませんし、マイクロソフトワードの自動変換でも出てこなかった(対応が早いから、今は出てくるのかもしれません)用語ですが、突然日常語になってしまった感があります。
今年の流行語大賞にノミネートされるのか、それとも大昔から日常的にこの用語を使っていたかの如き感覚で多用する、政治家やテレビコメンテーターが大勢いらっしゃるので、そういう方々に忖度して、逆に流行語大賞にはノミネートされないのかもしれません。

ある日突然、多用されるようになった言葉の先輩には、前の行で使ってみた『忖度』という言葉があります。

これについては、最近はあまり使われることがなかったものの、実際に昔からある日本語であり、私が不勉強で知らなかっただけですし、使ったことのない言葉であったというだけで、恥ずかしいとすれば私の方なのですが、この『人流』に関しては、声を大にして「それ、どういう意味?」と言いたいのです。

もちろん、字面からして最初から意味は理解できましたが、どうも元々存在しなかった言葉を急に多用する人が増えたのには、多少の、実際は大いに抵抗があります。

 たぶん、昨年からの新型コロナウィルスの流行、蔓延対策、分析で、『人々の蝟集する状況を抑える必要がある』といったようなニュアンスを、論文、報告書等で繰り返し述べなければならないときに、文字数節約のためと字面で理解されるであろうし、文章で表現する内容だから『人流を抑制する』といった表現でも、理解されるはず、許容されるだろうと、どなたかが創りだした新しい言葉、造語であろうと推察されます。

どうも、そういった新造語であるにもかかわらず、私は何十年も前から日常的に使ってましたよ、あなた方一般人とは違ってね、と言わんばかりに多用する政治家は、正直言って信用なりません。

内容を伝え、理解してもらいたいという、政治家として最も重要かつ必要な任務を放棄し、自らを虚飾して次の選挙のことだけを考えているのかな?といったようなことを考えてしまいます。

意味不明な優越意識を持ちたがっているのか、多くの一般人が理解できないであろう外国語を、意図的に多用する心理、感覚と似ているのではないでしょうか?

公務員の歓送迎会

 あらゆるレベル、国家公務員から地方公務員まで、通達無視の歓送迎会という宴会がこっそりと開催されて、一部は感染拡大の原因にもなったようで、大いに非難されました。
特に、寄りによって厚生労働省の通達無視の歓送迎会でクラスターが発生したことで大きなニュースにもなりました。

多くの方々は、公務員の質の低下を嘆き、どうしてこんな簡単な通達を守れないのか?何を考えているのか?といった痛烈な批判をしました。

まあ、確かにそうとも言えるのですが、逆に考えると、この非常時に、私は当初から開催反対派ですが、オリンピックは無理矢理にでも開催する、欧米並みの感染拡大も心配されているときに、なぜ定期異動を実施したのか?と言うことこそが責められるべきではないかと思います。

アメリカのテレビドラマに出てくるFBI(米国連邦捜査局)支局の話ですが、大事件が起こったから、出張、転勤、定期異動はすべて一時ペンディングにするという通達が出されていました。
大事件を解決しようというのに、息の合った熟練の捜査官が他地域の局に転出してしまい、経験が十分でなく、土地勘もないような、もしくは新任の捜査官に担当させたら捜査能力が低下してしまう懸念が生じるからです。

実際に、FBIでそういったことが行われるのかどうかは知りませんし、一般の日本の公務員よりは、FBIエージェントははるかに高度な実戦的訓練を受けているかと思いますので、実際には転勤、定期異動は実施されるのかもしれません。

日本の公務員にとっては、評価を受けやすい部署に異動してこそ出世のチャンスということもあるでしょうし、同じ部署でそのまま上席に移動ということは、ギクシャクするのを懸念してか、避けているようですから、定期異動がないと全員同列ではありますが、出世が遅れる、ということは現実にあり得るかと思います。

しかし、政府、政治家側に非常時という認識があるのなら、定期異動は一時ペンディングして、それぞれ慣れた担当部署で職務に専念してもらうことが一番であるはずです。

口先では、「非常時!非常時!。私権制限を盛り込んだ憲法改正をしてでも徹底した感染症対策を」的なこと言っておきながら、実は真意が『感染症対策』にあるわけではないから、下には徹底されない、高を括ってしまう、と考えると腑に落ちてきます。

現に、与党の大臣経験者でもある大幹部が、憲法改正のためにこの『コロナピンチをチャンスに』と公言しておりましたから、開いた口がふさがりません。

東京、大阪で大規模ワクチン接種会場を、自衛隊だけの人員で設置、運営というのは、またとない実戦訓練です。
有事には、前線ではない、一応安全圏に、後方大規模軍病院を設置するのは戦略上の常識であり、絶対に必要なことです。

 これを諸外国から『戦争準備』という批判を受けず、現憲法下においても国内からも批判の出ない状況という現状は、そういう方向を目指す方々にとっては、正に千載一遇のチャンスであって、つい、「ピンチをチャンスに」という言葉が笑顔と共に出てしまうことは、十分に納得のいくところです。

この記事を書いた人

株式会社 西式サービス西会 本部長西 万二郎
昭和27年(1952年)東京生まれ。東京工業大学工学部付属工業高校機械科を経て立教大学社会学部卒業。西式健康法創始者、西勝造の次男・西大助(西式健康法普及団体、西会第三会長、故人)次男として生まれ、在学中より西式健康法西会本部に勤務し西式健康法普及活動を開始。昭和52年業務部長、昭和63年本部長に就任。主な著書に『西式健康法入門』(平河出版社刊、共著)がある

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