西式健康法

西会本部公式ホームページ | 株式会社 西式サービス

食塩について | 栄養01

約5分

今日では「食塩」は無条件に悪者というイメージになってしまっていますが、一度見直してみる必要があります。

どのような成分であっても過剰摂取が有害であることは明らかです。西式健康法では柿の葉茶や生野菜で、できるだけ多く摂るように推奨しているビタミンCですが、ビタミンCでさえ例外ではありません。

ビタミンCの場合は、どのくらいの量から過剰摂取になるのかというとはっきりとしたデータはありませんが、1回摂取量として500mg 以上は明らかに多すぎるのではないかと考えられます。もちろん、一部の金属ミネラルのように一定量以上の摂取では明確な毒性を呈するというわけではまったくありませんで、ビタミンCの場合は消化管中のpHに大きな影響を与えてしまうことが問題なのです。

ご承知のように胃内の平均pHは胃酸という塩酸によって2.0程度に保たれています。細菌の侵入を防ぐための殺菌が主たる目的ですが、強酸性ですからある程度たんぱく質も分解してくれます。

すい臓から分泌されるたんぱく質分解酵素は、pH2.0程度で最も効率よく働くことが知られていますが、それにあわせて胃の出口(幽門)を出た消化物はpH2.0になるように、胃酸、強酸でない分泌液の分泌量は精密にコントロールされているというわけです。

そこへ通常の食べ物ではありえないような強酸性物質(一定濃度以上のビタミンC水溶液のpHは2.2前後とされています)を胃内に多量に入れてしまったら、小腸以下の消化管内のpHコントロールは滅茶苦茶になってしまいます。

ビタミンCが強酸性を呈するという問題は以前から懸念されていまして、その弊害を避けるため、ある時期にはアスコルビン酸ナトリウム(ほぼ中性)として摂取することが主流でした。

ところが、今日ではナトリウムの過剰摂取こそが最悪という風潮によって、ビタミンCのpH問題は忘れ去られてしまった、といった感があります。

なお、野菜や果物などに含まれる自然の状態のビタミンCは、酵素処理によって人工的に作られた純粋体のビタミンCとは違い、完全生食療法を旬の路地野菜だけで実践したところで、一度に500mg とか摂りようもありませんから、いくらとってもpHの心配をする必要はまったくありません。

さて、ナトリウムの問題からやっと食塩の問題に入ることができましたが、ご承知のように食塩の化学構造式はNacl です。ナトリウムイオンと塩素イオンがイオン結合した物質が食塩(塩化ナトリウム)です。

完全に確立された、動かしがたい科学的事実になどまったくなってはいませんが、食塩の摂りすぎによって懸念されていることはナトリウムの摂取過剰であるとされています。

ごく一般的と思われる解説によれば、「体内のナトリウム量が多くなると、身体は濃くなってしまったナトリウム濃度を適正な濃度に薄めようとします。その働きで、細胞内の水分が血液中に移動し血流量が増えることから、手足を中心に身体全体がむくみやすくなり、また、高血圧にもなりやすいといわれています。」であるとか、「塩分の過剰摂取が続くと、ナトリウムを排出するために血液内の大量の体液交換が行われ、血圧の高い状態が続くため、高血圧になると考えられています。」

といった極めて曖昧な理由が示されているだけで、科学的な事実といえるようなレベルではまったくありません。

消化管内の消化途上食物を分解して水に溶かし込んで、それを腸管絨毛内毛細血管へ吸収するとか、間質液を毛細血管内へ再吸収することも、また、ひとつひとつの細胞内外への物質を溶かし込んだ水の移動(栄養成分を取り入れ、老廃物を排出する)であるとか、そういった現象のほとんどは浸透圧という物理現象をベースに行われています。

そして、その浸透圧の圧力勾配(強弱というとやや語弊があります)を決定する主力物質がナトリウムです。塩化ナトリウムは地球上で最もありふれた物質のひとつであり、容易に水に溶解するといった性質が、生物としての基本的な活動を担うミネラル物質として採用されるに至ったのでしょう。

ですから、ナトリウムの過剰摂取に対する害は相当いい加減な話ではありますが、欠乏したときには大変深刻な問題が生じます。今日の平均的な食生活ではまったく心配する必要もないかとは思いますが。

多細胞生物が最も重要視するのは、細胞内外、組織内外への物質の出入りを正常に最も効率よく行わせるために、最適な浸透圧勾配を維持することであり、その浸透圧勾配を決定する主要要素がナトリウムであるということです。

ですから、ナトリウム摂取量(食塩摂取量と考えても間違いではない)が極端に少なくなると、体内の水分量を減らしてその濃度を一定に保つことを最優先に調整します。体内の浸透圧勾配を維持するためです。

体内の総水分量が減少すれば血液量も同時に減少します。血液量が減少すれば血管内を占める血液量も減少することになりますから、動脈血管内壁に作用する圧力(血圧)も低下して、そのとき測定すれば血圧が下がっているという順序です。

つまり、極端に塩分を制限すれば(1日3グラム以下であるとか)血圧が下がることが多いが、それが健康長寿に有効かどうかということになると別問題であり(疫学統計的にもかえって短命と結論が出ています)、過剰なナトリウムは腎機能の低下がないかぎり尿中に排泄されますから、塩分摂取が多いからといって、比例して血圧が上昇してしまうということでもありません。

高血圧が諸悪の根源という思い込みと、減塩によって血圧が下がる人が多いという事実とを結びつけていつの間にか都市伝説的になってしまったのが「減塩信仰」ということでしょう。

最後にひとつだけ申し上げますが、塩は良質のもの、海水から水分を飛ばして作った塩化ナトリウム以外の海水にがり成分を含んだ、俗に言う「自然海塩」が最も好ましいと思われます。

ただ、過剰なにがり成分は害が出る場合がありますから、良い塩を使うだけにして、あえて液体のにがりを加えるようなことはするべきではありません。

また、西式では日常的な減塩をするのではなく、3週間に一日程度の割合で「塩断ち日」を設定するようお勧めしています。

この記事を書いた人

株式会社 西式サービス西会 本部長西 万二郎
昭和27年(1952年)東京生まれ。東京工業大学工学部付属工業高校機械科を経て立教大学社会学部卒業。西式健康法創始者、西勝造の次男・西大助(西式健康法普及団体、西会第三会長、故人)次男として生まれ、在学中より西式健康法西会本部に勤務し西式健康法普及活動を開始。昭和52年業務部長、昭和63年本部長に就任。主な著書に『西式健康法入門』(平河出版社刊、共著)がある

コメント

*
*
* (公開されません)

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

Comment On Facebook

G-RRXBNEVVBB