朝食廃止論

朝食の害

 

朝食の害については一般にまだ充分に認識されていないようである。

日本も昔はすべて昼食の一食であったが、文化が進むにしたがって二食となり、遂に元禄時代(一説には応仁の乱以降)から一般に今日の三食となったのである。三食となっても、近年までは朝食は一般に軽い食事であったものが、人間がだんだんぜいたくになったため、朝食に各種の料理を出すようになったのである。それでも、一般家庭では朝食はもっとも簡単なものを食している。

昔、わが国が二食であったという文献は、後醍醐天皇の御勅作「日中行事」に、「朝の御膳は午の刻なり」とあり、午の刻というのは今の午前11時から午後1時までの間をいうのである。また同書の中に「申の刻に夕の御膳がまいる」とあって、申の刻というのは今の午後4時から6時までの間をいうのである。つまり、当時は昼タの二食であって、朝食はない。その他、一日二食の文献は数多いが今はここに挙げない。詳しくは拙著(西勝造著)『朝食害毒論』および『二食健康法』について見ていただきたい。

朝食の有害なことは、これをやめてみないとわからないが、慢性胃腸病、神経痛、ロイマチスなどに悩んでいる人が、単に朝食を廃しただけで忘れたように治ったり、軽快したりすることから、これの有害なことがわかると思う。

 

 

朝食はなぜ有害?

 

朝食がなにゆえに有害か?これは、いろいろに証明できるが、われわれは夕食後は働かずに就寝するから、夕食にとった栄養は、消化吸収されて、朝起きたとき血液には栄養が充満していて、午前中の活動にはさしつかえない。そして、腸管は食物のカスを体外に排泄しようとし、吸収した栄養の同化作用をやった残りの分解生成物を腎臓が尿に分離排泄するのは、この午前の時間であり、この間に胃や小腸には休養を与えることが必要である。このときに栄養をとるということは、ちょうど蒸気の上がっている汽缶に、さらに石炭をたくようなもので、汽缶は安全弁が吹くか、破裂するかのどちらかになる。このたとえから考えても、朝食が不必要なばかりでなく、有害であることが知られるであろう。

ウェーヴァー氏著『人間の健康』のなかには、つぎのように述べられてある。

「正午前には、食事は食べないほうがよい。一日一回ないし多くとも二回の食事で満足すること。太陽が頂点に達するまでの朝の時聞は、余剰物質(尿、便、その他の排泄物〉を生体から取り除くのに、最も適した時刻である。もしもこのとき朝食を食べると、尿中にはなんら余剰物の排泄は見出されないであろう。朝食は単に習慣の問題にすぎないのであって、皆様が一度、自らこの習慣を破ってしまえば、決して戻ってくることはない。それというのも、朝の空腹は自然ではないからである。この生活改善だけでも、皆様の生命は幾年かを増加するであろう。」

とあって、一度廃止してしまえば、ふたたびこの習慣に帰ることはない。朝食は単に習慣の問題である。事実、朝食を廃止した午前中のそう快さ、頭脳の明快さは、到底朝食摂取者の味わうことのできないものである。この気分は朝食を廃止してある期間が過ぎ、たまたま朝食を食してみると、その害毒のあることを親身に感じる。

 

 

尿の試験

 

これを科学的に証明するには、尿の試験がよい。朝食を食べて、神経痛やロイマチスにかかっていた人が、朝食を廃止して、それが治ったり、軽快したりするのは、筋肉や関節に停滞していた毒素が、朝食を廃止したために、排除されたのである。かかる毒素はどこから、排除されるであろうか。これは、腎臓でろ過して尿から排泄された以外に道はない。

フランスのスーリエ氏著『毒素とその探究』のなかに

「(毒素化合物の排泄路の中で、血液はその約80~90%を引き受けていることを指摘し、)この毒素は可溶性であるから、血液中に入るが、血液にとっては毒素は異物であり、望ましいものではないから、自然尿という経路をとって、排泄されるのである。

重症性患者中には、最も多量のインドール(たんぱく質分解の際に生ずる物質)が見出され、これが健全な人の尿中にある量よりもはるかに多い。これは毒物である。したがって、尿中に出てくる毒素は、個人が排出する毒素の大部分である。ゆえに、朝食を食べている人と、その人が朝食をやめてからの二つの場合の尿中の毒素を分析して比較すると、朝食が人体におよぼす影響を知ることができるのである。」

そのとおりに私は尿中の毒素を分析して、朝食問題を研究してみた。

まず、朝食を摂る人の尿を、一週間丹念に排泄ごとに検査し、一日の尿全量に対する毒素の平均割合を算出する。

つぎに、同一人が朝食を廃して二週間以上経過して後、一週間連続して前同様に毒素の平均割合を算出して、それを比較するのである。その結果、私はつぎの成果を得たのである。

 

(1)昼食抜きの朝夕二食者の尿中の毒素の割合:66%

(2)一日三食者の尿中の毒素の割合:75%

(3)朝食廃止の昼タ二食者の尿中の毒素の割合:100%

(4)一日一食午後3時ないし4時の間に摂る者の尿中の毒素の割合:127%

 

尿中に毒素が多く出るということは、毒素が多く作られるものと速断してはならない。毒素の生成せられる量はほぼ一定であるが、朝食を摂ると、腎臓機能が完全に働かないために、排池すべき毒素が体内に残って、各組織の聞に停滞するのである。それであるからこそ、朝食者に神経痛やロイマチスが多く、朝食を廃止すると治のは、停滞した毒素が排泄されたためである。

 

 

朝食廃止のニ食主義

 

朝食を廃止すると、午前中の尿量がふえ、体重が減少するが、これは、停滞していた毒素の排泄がおう盛になって組織が浄化されるから、毒素を簿めていた水分が逃げて組織がしまったために一時的に体重が減少したのである。つまりむくみがとれたのである。

午前中は、排泄のために働くべき胸椎九番以下の神経が、朝食を摂ったためにその作用を中止するから、腎臓における毒素の分離ができない。その結果として、脚部の血液循環に支障をきたし、二次的に腎臓機能の障害を招き、さらに血管機能を妨害し、心臓にも影響をおよぼすことになるのである。

昼食抜きの朝夕の二食の習慣の者は、朝昼タの三食者よりも、毒素の停滞が多いことは、驚くべきことで、昼食抜きの二食者が、多くの場合不慮の疾患にみまわれることは、しばしばわれわれの目にするところであって、その原因は毒素の排世不充分なるによるものである。午後3時ないし4時の間に一食を摂る人の毒素の割合は最も大きく、この面からは理想的であるが、文化生活を営むわれわれとしては、社交上生活上不便であるし、また栄養上食品の取り合わせとしても不充分を免れない。そこで現在生活上は、朝食抜きの二食主義が理想であろう。

 

 

朝食廃止の効果(その一〉

 

朝食廃止の効果は、書き立てると86項目もあるが、ここにはそのいくつかを抜粋してみる。

(1)多くの病気がなおせる。胃腸病、神経痛、ロイマチスなどの慢性疾思は、朝食廃止だけでも治癒しもしくは軽快する。

(2)健康を保つことができる。

(3)食事がおいしく食べられる。

(4)時間の経済となる。朝食を食べないから、それだけ時間に余裕ができる。台所をあずかる主婦の時間と負担は大いに軽減される。

(5)食物の量が少なくて済む。朝10、昼10、タ10 合計30 食べていた人は、朝食を零とするから、昼10、タ10の20 で済むようになる。これは朝食の害が除かれ、胃腸が健全となって食物の消化吸収の効率が増してきたから、食物の量が三食の場合の三分の二でよくなったということ。

(6) 燃料の節約ができる。朝食の炊事が省けるから、これに要する燃料が経済となる。

(7) 便通がよくなる。朝食廃止の当初には、便通が不規則となるが、これになれてしまえば、前よりいっそう良好となる。

(8)不必要な発汗が減る。朝食を食べている人と、廃止している人とを比較してみると、やめている人のほうが、発汗が少なく、したがってビタミンCの破壊が少ないことになる。

(9)ビタミンCの破壊が少ない。これには、夜寝ていても、直腸温度の上昇しない体を作らなければならない。それには朝食廃止をやるのが一番である。直腸温度が上がらなければ、ピタミンCの破壊が少ない。ピタミンCが破壊しなければ、歯が悪くならない。壊血病にかからない。壊血病は種々の疾病の原因をなすものである。

(10)寄生虫が減って来る。これは、便通がよくなり、寄生虫の温床となる宿便が排除せられるからである。

(11)精神が明朗になる。寄生虫がわいていると、常にゆううつである。

(12)決断力が出てくる。これは、物の見通しがよくなるからである。

(13)頭脳明快となる。これは、宿便が排除せられるからである。

(14)肥満症がなおる。血圧が下がる。朝食を廃止するとやせるような方は、いったんむくみが取れると、またしっかりと太ってくる。ブクブクに太った方は、朝食を廃止すると、ちょうど良い具合に、やせてくる。血圧の高い方も、朝食廃止で下がる。これは、肥満症がなおり、宿便が排除せられるから自然血圧も下がってくるのである。

 

 

アメリカにおける米食法

 

本年(1948年)11月29日のニューズウイークの医学編に次の記事がある。

 

米食法

多くの高血圧症の療法のうち、米食法以上に、広く知れわたっている療法はない。この方法は、その創案者であるデューグ大学のワルター・ケムプナー博士によって1944年(同年6月9日付ニュ一ズウィーク参照)に発表された。それは5グラム以下の脂肪、約20グラムのたんぱく質、200ミログラム以下の塩化物、および150ミリグラムのナトリウムを合み、一日2000キロカロリーの食事により成るものである。

ある医師は、主として米と果物、ならびに制限された食塩の摂取からなる高度に制約された食事は、たとえ血圧は下がっても重い栄養不良に陥るであろうと論じている。しかしながら、先週ニューヨーク心臓学会の会合において、ケムプナー博士は、700例の重症患者が35日から900日この療法で生活しており、これらのうち、70%はこの療法に対して良好に反応していると、その非難に応酬している。

これに引続いた円卓討論会で、ケムプナー博士は演説をしたが、その結論において、その会議の司会者であるニューヨークのアレキサンダー・ピー・ガトマン博士は「ケムプナー博士の結果はきわめて感銘的である。しかしながらよく管理された条件下において、なお多くの業績を積んだ後、初めて米食法の充分なる価値判断がなされるべきである」と結んだ。

 

もしもこの際、わが西医学における朝食廃止をはじめとする種々の簡単なる方法が厳密に行なわれるならば、なにも高血圧に悩むこともなく、悩む高血圧も間もなく回復するであろう、と私は付け加えたいのである。

 

 

朝食廃止の効果(そのニ〉

 

(15)乳幼児、青少年に対しても朝食廃止は有効であって、少しも心配することはない。乳児に対しても、午前十時半までは乳を与えず、そのまま水だけ飲ませておけば健康に育つ。小学校、中学校、それ以上の学童、学生ももちろんさしつかえない。

(16)歯の故障が減る。ピタミンCが破壊されないから、壊血病にかからず、したがって、歯槽膿漏などの歯炎が減少する。

(17)心臓、腎臓、膀胱などの故障が減る。

(18)限がよくなり、耳がはっきりし、鼻がきくようになり、のどの炎症がとれ、声がよくなる。

(19)よく眠れる。

(20) 若返り、精力おう盛となり、これを事業のほうに持っていけば、仕事の能率があがり、事業が繁栄する。

(21)不老長生、無病息災となる。

その他、数々の効験を数えることができる。要するに、朝の時間は尿を出すことが第一であり、したがって尿量も多いのである。

 

 

日本人は強健な民族である

 

元禄時代に、わが国に渡来したケムペル(Kempell)というオランダ人の書いた『日本紀行』によれば

「日本人は強健である。胆力があって勤勉で勘忍に耐え、践者は諸草、海藻類、生野菜を食し薄着、無帽、素足で、ャツを着ることがない。頭には木枕(木製箱枕を用う) を用い、深夜寝ること少なく、諸種の勤労に耐える。」

といって、わが国民の健康と勤勉とを、驚嘆すべきものと賞賛している。元禄時代に、朝食を食べていないことは、義士討入に朝食を食べたという記録はないことでも知られる。

戦国時代の武士が、あの重いよろいを着、かぶとを被り、長槍を振い、太刀を執って、あるいは徒歩で、あるいは騎馬で戦っている。いまの人間では、その武装をして、ただ歩くだけでも大変であるう。これらは、他にも理由はあるだろうが、朝食廃止が大きな原因をなしていることは争われない事実である。

天主教布教のために、400四百年くらい前にわが国に渡来したクラッセ(Classe)の書いた『日本西教史』にも、このことを裏書きして

「日本全国を一大道場というも誇大にあらず。国民はよく戦闘に耐え、身体長大にして健康なり。云々」

とある。

 

 

朝食廃止は容易である

 

朝食を廃止するということは、いかにも困難であるようであるが、これはただ信念の問題であり、決心の問題である。味噌汁はよかろう、果物はよかろう、お茶はよかろうといろいろいわれるが、ともかく栄養をとることがよくない。お茶も相当の栄養価を持っている。そこで、生水以外は午前中に飲まないのがよい。一家こぞって実行すれば、主婦の台所の仕事は、大いに軽減するであろう。

一度、朝食廃止が実行されたならば、心身の健康と、頭脳の明断とは、とうてい三食者の経験を超絶している。速やかに朝食廃止の二食主義を実行されたい。