皮ふ、栄養、四肢ならびに精神

私、西勝造は私の独創の理論と、七万三千余の文献の裏付けによって人間の健康が皮ふ、栄養、四肢、ならびに精神の四つの要素に支配せられることを知った。これを私は西医学健康法の四大原則ととなえているが、これら四つがそれぞれに完全であってはじめて正しい健康が保たれるのである。また、これら四つは相互に緊密に影響し、因果の法則(善因善果、悪因悪果)によって厳密に健康が支配されているのである。

 

 

皮ふ

 

皮ふは人間が生まれてはじめて外気に接する部分であり、人間と宇宙との境界である。胎児の間は、呼吸がないから、肺循環の必要がなく、右心房と左心房との間には、卵円孔という短絡道があるが、胎児が生まれて呼吸を始めると、この卵円孔が閉鎖されねばならない。この時間内は、肺循環が不完全であるから、皮ふがその間の補助的作用を営むのである。私が、胎児は生まれてから一時間四十分裸体でおくことが必要であると主張するのはこういうことである。こうすると、卵円孔の閉鎖が完全に行われ、初生児黄疸(おうだん)を起こさないのである。

人間は衣服で皮ふを包むが、包みすぎると肝臓が弱くなり、肝液素の分秘が鈍り、腸のぜん動が鈍化して便秘に陥る。便秘は腸麻痺の原因となって、宿便を停滞し、これが脳に影響して、手足の神経を麻痺する。手足の神経が麻痺すると、血液の循環が悪くなって、四肢けつ冷症となり、腎臓に故障を起こし、ついで心臓、肺臓、血管におよび、これが万病に発展するのであって、そのもとは皮ふの包みすぎ、すなわち厚着にあるのである。これをなお詳しく表わすと、つぎの通りである。

 

肝臓

肺臓               肺臓

心臓               心臓

皮膚 → 腎臓 → 腸 → 脳 →四肢 → 肺臓 → 万病

血管               血管

膀胱               腎臓

 

そこで、なるべく皮ふは包みすぎないように、厚着の習慣は極力避けねばならない。

 

 

栄養

 

栄養が健康に影響することは当然である。人間は、火を発明してから食物を調理するようになって、ビタミンやその他の栄養素が破壊され、このために栄養不足となって身体組織細胞が活力を失ぃ、細菌に冒されたり、がんや筋腫などができるのである。栄養の不完全はまた皮ふや四肢に影響をおよぼし、精神にも悪影響をおよぼすものである。

また、食物が精製されるところにも、栄養上の不完全をきたすのである。白砂糖、白米、白パン、魚類や肉類で頭や骨や臓物を除くと、このためにも栄養上の欠陥を生ずる。

物を煮ると、食物の含有するたんぱく質は二分の一に減ってしまい、天然にはいっている塩分は四分の一になってしまう。したがって、煮たり焼いたりしたものを食べる場合は、二分の一に減ったたんぱく質と四分の一に減った塩分とを補給するために、生で食べれば少量で済むものを、生の量の二倍だの四倍だのを食べなければならず、そのうえ熱によって栄養素は凝縮するから、その凝縮している栄養素を吸収できるように解きほぐすために消化器官は余分の仕事を背負わされる。また食物の量が多いとそのために出てくる有害なる副産物や残渣物質の処理のために、肝臓や腎臓や腸がよけいな仕事をしなければならないから、それだけ生体は過労を強いられ、老衰を早めることになるのである。

人間が、ほかの自然に生息する動物に比べて、食量が多いのも、年をとるとしわが寄ったり、白髪になったり、頭がはげたりするのも、この煮たり焼いたりしたものを食ベるためである。狐や狸、熊や狼に頭のはげたものはいないし、鳩や雉に白髪になったものを見た人のないのも、彼らが火食をしないからである。してみると、食物における正しい指導が、健康建設に大きな役割を演じていることが知られるであろう。

 

 

四肢

 

四肢、特に足は人体の基礎であるから、この基礎が不完全であると、それから上の身体はどちらかに傾斜し、このために脊柱はいろいろ複雑なる湾曲をきたし、椎間軟骨は楔状をなし、曲がりの内側では、椎間孔から射出する神経および血管は圧迫を受けて、神経は麻痺し、血管は圧迫によって循環障害を起こし、これに連なる内臓器官や皮ふや、骨格筋肉などに障害を起こすのである。はなはだしいときは、脳髄も冒され、精神薄弱や精神異常をきたすこともある。

手が故障を起こすと、肺臓や脳髄に障害をおよぼし、ひいては心臓やのどや血管に故障を生ずることも自然であろう。

 

 

精神

 

精神、皮ふ、栄養、ならびに四肢は、健康上重要なる要素であるが、これを統率するのは精神である。したがって、精神上の障害も、皮ふや肢、ならびに栄養に影響をおよぼすものである。これを私は正三角四面体にあてはめて図のように表わし、人間の健康問題に対する四大原則と称しているのである。

正三角四面体は、立体の中でその体積が最も小さく、しかも力学的に最も丈夫なものである。私は西医学健康法発表と同時に、この正三角図面体をもって私が創始した健康法を表現せしめ、西会もこれを取ってその記章としているのである。正三角図面体はテトラヘドロン(Tetrahedron )であるから、西医学健康法をテトラヘドロパシー(Tetrahedropathy)、短くしてテトラパシー(Tetrapathy)と名付けた。パシー(Pathy)は療法ということである。このことは、前に申した通りである。

 

 

西医学健康法

 

西医学健康法は「皮ふ、栄養、四肢、ならびに精神の四大原則をおのおの正しくするにはいかにすべきであるか?」、「この正しい四大原則でいかにして健康が建設せられるのであるか?」を教えるものである。健康は人生の最大幸福であって、古来人間の不幸は、その病弱より大きいものはなかった。毎日の新聞記事を賑わしている社会のできごとが、心身の不健康に起因しないものがあるだろうか。極言すれば、真の世界の平和は、人類一人一人の心身の健康が確立されるとき、はじめて実現できるのである。古代ギリシャの医師へロフィルスは、

「もし健康なくば、学問も技芸も等しくその効用を示すに由なく、力も用うることができず、富も役に立たない、雄弁もまた無力である」

と言っている。実に至言である。われわれはいかにしても、この健康を建設せねばならない。そうして、人類を、永久にこの疾病の手枷足枷(てかせあしかせ)から解放しなければならない。このことは、私に天が与えた使命であると信ずる。私はこれを成し遂げる確信を有し、具体的であって、万人に普遍的に応用し得る方法を持っているのである。それは「西医学健康法」にほかならない。