健康生活の秘訣とはいったいどんなものか?

放任された生活

 

健康生活の秘訣というのは、病気をしない生活のことである。病気をしない方法は、病気の原因を究め原因を除くことであり、除くことができなければ原因を修整することである。

人間が、幾多の病気になる原因を有しながら、対策も講ぜず、自然の成り行きにまかせてきたところに、われわれの健康を脅威する素因があったのである。

たとえば、自転車。乗って帰ってきたときは、ほこりを払い泥を落とし、きれいに掃除をし、朝乗って出るときはタイヤに空気を詰め、油をさし、完全に作動するようにしてから乗り出す。

なのに人間については、そんな手入れもせず、手入れの方法を研究もせず、ただあるがままにまかせて使い放題に使っている。自然の良能の作用で回復するとはいえ、われわれの心身に日々必要な手入れを施し、毎日朝起きたとき、ないしは勤めに出かけるときは、心身に一点の故障もなく完全無欠の状態にして出かけるならば、仕事の能率もあがり、少々過激な勤労にも充分耐えていくことができるであろう。また、毎日帰ったときには、一日の勤労によって狂った種々の部分を修理して、また明日の勤労に備えねばならない。

そうなると、人間に対する日々の手入れの方法やいかにという問題が自然に発生してくる。

 

 

人問機械の手入れ法

 

元来、人間が病気にかかるということは、その大小の故障が積もり積もって、とうてい平常の状態において内密にこれを修正することができなくなったときに、大修理の必要が起こり、下痢や嘔吐や発熱や発疹やその他千態万様の症状を起こすのである。

われわれは無智であるがために、心身の多少の違和やその警告を無視し、ただ文化生活の名において、したい放題を行ない、食いたい放題に食って、それで病気になりましたでは、誠におはずかしき次第といわねばならない。

われわれは自転車に乗るときに毎日の手入れをよくするように、われわれの自律神経は、われわれを健康に保とうとして、四六時中ほとんど一瞬の休みもなく、働いているのである。われわれが健康であるということは、われわれの体液が中性に近いところに保たれているためである。体液の水素イオン濃度指数pHは、人によって若干の差はあるが、おおむね7.2から7.4の間にある。私の体液のpHは7.26あるが、この7.26を正しく厳密に保持するために、神経は始終多大な努力をしているのである。この事は、一日中の尿のpHの測定によっても知ることができる。すなわち、われわれの食物、生活、環境によって、われわれの体液は常に変化するのであるが、この変化を食い止めて、その人のpHの正常値たとえば7.26を保持するために、多すぎる酸またはアルカリを尿に放出していくから、尿のpHはそのために変化するのである。たとえば、起床したとき尿のpHを計ったものが6.8あり、昼食後は5.0となり、夕食前には7.0となるというように、そのときどきに、尿のpHを変化して、体液のpHを7.26に保持するのである。この尿のpHの変化を測定して、私は心から自律神経の作用を感謝するのである。尿のpHは5.0から8.0までの変化では、別に心身上の違和として症状を表わさぬが、この範囲を逸脱すると発然、発汗、嘔吐、下痢などの症状を起こすものである。すなわち、体液のpH5.0から8.0までの範囲は、健康の緩衝範囲であって、中性7.0を超えて若干アルカリに傾いている7.26は、健康への弾力である。

生体はかくのごとく、自然に病気にかからないような万全の手段が講ぜられているのである。それなのに病気にかかるなどは、よくよく正常生活の逸脱であり、誠に自然作用への冒瀆(ぼうとく)であって、自律神経の良能に対して大変な迷惑をかけていることになるのである。

聡明なる読者諸君は、この点を充分に理解して、健康なるときどいえども、よく西医学健康法の指示するところにそって、この健康弾性の緩衝範囲を逸脱しないように注意しなければならない。そうするときにおいては、病気にもかからず、たとえ病気であっても、旺盛なる自然の復元力(回復力)があるのであるから、誤った生活から、正しい生活に戻るならば、間もなく天与の健康体に回復するであろう。