代表ブログ 026 – 栄養学は科学?

前々月のことですが、NHKラジオの早朝健康番組で放送されていた内容を以下に簡単にご紹介します。

『医療としての肥満治療では、摂取カロリーと消費カロリーのコントロールが一番重要であるが、患者の中には消費カロリーより明らかに摂取カロリーが少ないことになっているのに、ちっとも痩せない人がいる』

のだそうです。

私はこのラジオ放送を聴いて初めて知ったのですが、現在、消費カロリーは定期的な尿検査によって、極めて正確かつ精密に計測できるのだそうです。

ということは、間違っているのは患者自身による食事内容の申告であって、詳しく問診をすると、いろいろと記載漏れがあることが判明するとのことです。

エネルギー消費の測定法としては、従来は酸素消費量(二酸化炭素排出量)から推定する方法が知られていましたが、このクレアチニン濃度の測定も筋肉の発生した運動エネルギーをかなり精密に測定できるということです。

しかし、実は私がこの放送に期待していたのは、運動エネルギーとしてのエネルギー消費量ではなくて、熱として放散されてしまうエネルギーについても、最新栄養学として計測が必要であるというレベルに届いてくれたのか?

あるいは、消化吸収率の問題についての言及が在るかどうか?という期待であったからなのです。

しかし、残念ながら、いまだに栄養学では食品に含まれる燃焼可能なエネルギーはすべて吸収され、それらのすべては運動エネルギーとして消費されるはず?という、まったく非科学的な観点に立っているようだということです。

言うまでもないことですが、まず、経口摂取した食料がすべて消化吸収されてエネルギー源、あるいは脂肪として体内に備蓄されるわけではありません。

もしそのようなことがあるのなら、大食いチャンピオンは全員昔どおりのイメージの相撲取り体型、肥満体型でなければならないことになりますが、実際にはそのような体型の人はまったくといって良いほど見かけません。
ローカルなお祭りの大食い競争では、そういう方でも優勝することがあるのかも知れませんが。

テレビ放映されるような大食競技会で優勝するチャンピオンは、競技会中は1日量として2万kcal以上を食べるのだそうですが、肥満体型の人はいませんし、どんどん肥満してしまうという人も皆無であるといって良いでしょう。

当たり前ですが、大食いチャンピオンの方々は、肥満防止のために試合後150km~200kmとかを走るなどして見合ったエネルギーを消費しているわけではありません。

どこかで吸収量、率を調整、制御していることになりますし、ヒトの糞などは他の動物の食料にもなり得るということも周知の事実です。

尿、便中の残存エネルギー

摂取した水分を体温にまで上昇させるために消費した熱量については、計算上は基礎代謝の中に含まれていることになってます。

排泄物の温度は基本的に中心部体温と同じ温度であり、平均的には1.5~2.0kg毎日排泄物として捨てています。
尿等に含まれている熱量に関しては、常に冷やした飲料を飲む習慣の方であっても、それは計算上数十kcalに過ぎないことになりますから、これは無視してもあまり大きな問題にはならないでしょう。

しかし、前述の大食いチャンピオン達のエネルギー消費量が、一般人と比較して桁違いに多い、ということは考えられませんから、せっかく食べた食物中のエネルギーはほとんど吸収されずに排泄されてしまった、と考えるしかありません。

まさか、胃の中が4次元ポケットになっていて、どこかに転送しているなどということはないでしょうから。

そうなると、食べた食物の大部分はほとんど消化せずに、あるいはそれなりに消化はするけど、ほとんど吸収されずに排泄されていると考えるしかありません。

大食いチャンピオン決勝大会進出者各人の、競技会後の大便を是非検査してみたいものですが、たぶん、部分的にしか黄色(胆汁の色)にも変色していないし、固形分も一部そのままの状態の便ではないかと想像しています。

この消化率あるいは吸収率が著しく劣る、あるいは自在にコントロールできるという能力は、何も彼らだけに備わった特殊能力というわけではなく、われわれも不十分ながらその能力はあるはずです。

つまり、食物に含まれるエネルギーのうち、どれだけが消化吸収されてヒト自身が使えるエネルギーに変換できるか?という、消化吸収効率こそが最大の要素であるべきです。

ところが、現代栄養学では、口に入った食べ物はすべて吸収され、運動エネルギーあるいは発熱のためのエネルギーとして消費されてしまうという、原動機工学等の立場からすると信じられないような前提で計算し、それに基づいて各種の主張をしているように思われます。

原動機の常識

原動機と言っても各種ありますが、本稿ではもっとも一般的なガソリンエンジンについて説明します。

ガソリンエンジンの熱効率、即ちガソリンが持っている潜在的な全エネルギーのうち、どれだけを運動エネルギーに変換できるかということですが、現在の最新型のエンジンでやっと40%に達したとのことです。

私、以前講習会のお話の中で「熱効率が、最近やっと50%を超えたのではないか?」というお話をさせていただいたことがあるのですが、これは勘違いでして、現在でも最高水準のエンジンでやっと40%に達したのだそうです。

50%という数字は、私が高校時代に学んだ際の定説から、この40年でそのくらいは進歩したのであろうという期待と想像であったということになります。
電子制御ガソリン噴射ポンプや、直噴エンジン等々ここ十数年で著しく進歩したという私の思い込みが、過大な評価につながってしまったようです。
私が原動機に関する勉強をしていた当時はどうも30%台であったようです。

さて、そういうわけで、エンジン設計に携わるものは燃焼室の形状を工夫したり、吸排気バルブの形状、径を変更したり、数を増やしたり、また、排気ガスがスムーズに排出されて、排気抵抗として燃料の吸入効率の低下原因とならないように、エグゾーストパイプの形状を工夫したり、といった努力を日夜続けています。
燃焼効率を0.01ポイント向上させるためにです。

これは以前、病院に勤務しておられる管理栄養士の方とお話しさせていただく機会があり、そのときに『排泄物内の残存エネルギーを計測するのか?それとも吸収率を係数化して性別、年齢別等の吸収率係数を掛けて算出するのか?』と聞いたところ、いずれもしていない、との回答でした。7~8年ほど前のことです。

ですから、栄養学という分野は、失礼ながら学問以前のレベルであって、原動機設計を仕事にしている方々から見れば、開いた口が塞がらないといったレベルの科学性?であり、そんな根拠であれ食べろ、これ食べろと言われてもなぁ~、といった気分になってしまいます。

さらには、エンジン設計エンジニアからすれば、基礎代謝が大きいほど良いといったような主張は、排気口から炎を噴出させても良く、大気汚染もまったく気にしないで良いよ、といったような条件下での設計思想に該当します。

F1エンジンの設計のような、非常に特殊な環境における巨大出力のエンジンを設計するときの考え方であり、どのように考えても総合的な理想からはほど遠いといわなければなりません。

どう考えても、効率が良いほど優れた機械、生物であり、ただ肥満が健康に悪い(それは事実ですが)という理由だけで、効率の悪い肉体ほど良いとほめられ、推奨されるようなことは本末転倒というしかありません。

そういった、自然科学法則に反する奇妙な主張をするのではなく、まずは少食を推奨し、それがどうしてもできなければ、生産性はまったくないけどエネルギーを消費するためだけの運動を行うもやむなし、という順序であるべきです。

効率の悪い肉体を推奨するような、バカげた主張だけは是非止めていただきたいと思います。