代表ブログ 018 – エクリン汗腺

代表ブログ17『育毛剤』で汗腺の機能について、単なる「体温調整」だけではないと申し上げました。

ただ、どのような文献を見ても、インターネットで調べても、他の哺乳類にはほとんど見られない多数のエクリン汗腺は、体温調整のために存在するとなっているはずです。

日本版ウィキペディの解説でも、エクリン汗腺については「主に体温を下げるために存在する」となっていますが、主ではない従としての機能は何か?といったことに関する記述はありません。

他の文献から「主」ではない他の機能は何かと調べてみますと、緊張したときに出る汗、辛いものなどを食べたときなどに出る汗があるから、ということで「主として」といった表現になったと思われます。

緊張したときに出る汗は、掌を湿らして滑りにくくするという機能があると考えられていて、イヌ、ネコの肉球にもエクリン汗腺は存在するとされています。
しかし、イヌ、ネコその他の毛の生えた皮膚の部分にはエクリン汗腺はまったく存在しません。

イヌ、ネコの体温調整は?

最大の熱放散経路は直接的な熱放射であるとされていますが、補完的な体温調整聞機構として、イヌは舌を出し、鼻腔内、口腔内の空気を出し入れして、気化熱を利用して熱の放散を行います。
イヌはマズルと呼ばれる鼻先から口角までの距離が長く、その内側は粘膜ですから、口腔内とマズル内の空気の出し入れで、けっこう、気化熱による熱放散が可能です。この行為のことをパンティングと言います。

ネコは、パンティングはしませんので、毛づくろいと言いましょうか、代わりに毛を舐めて、やはり気化熱を利用して熱放散をしていると考えられています。
ただし、熱中症寸前になるとネコもパンティングをするそうです。ネコがパンティングをしていたら、すぐに動物病院に連れて行くか、嫌がらないほどぐったりとしていたら、冷水に体を浸からせてあげたほうが良いでしょう。

ヒトはパンティングもしませんし、毛づくろいもしません。だから、体温調整器官として汗腺を充実させたのだろう、とお考えになるかもしれませんが、はたしてそれだけなのでしょうか?

ヒトは体温調整のための熱放散のほとんどを、発汗とその気化熱で行っているとお考えになるかもしれませんが、実際は、その60%程度は直接的な熱放射です。
イヌ、ネコは、同じこの蒸し暑い日本で生活していて、確かにヒトより熱中症に至りやすいということは事実ではありますが、だからといって40℃を越したからといってばたばた死んでいくわけでもありません。

ヒトは、主として体温調整のために発汗するということにはなっていますが、別に発汗だけに頼っているわけではないし、体温を過剰に奪われてしまえば生命に関わるような低温環境の中でさえ、絶え間なく水分を蒸散させ続けていることに注目する必要があります。

発汗については納得いかなくても、季節を問わず呼気中から水蒸気が出ていることを否定する人はいないでしょう。
呼吸のための空気の出し入れであっても、水蒸気も同時に放出してしまえば、確実に気化熱として熱を放散させていることになります。

植物が水を吸い上げる原理

発汗というと、液体化した汗しかイメージできないかもしれませんが、汗腺から放出する水分は基本的に水蒸気の形で放散されます。

呼気に水蒸気が含まれていることなどあまり認識させられることはありませんが、メガネに息を吹きかけてレンズを拭いたりすることは多くの方が行っています。
呼気に含まれる水蒸気が、体温より温度の低いレンズ表面に当たって液化(凝縮)し、細かい水滴となるからレンズ拭きの役に立つわけです。

何となく「沸騰させないと水蒸気はできない」と思っている方も多いようなのですが、沸騰現象とはH2Oが液体で存在することができなくなった状態であって、「湿度」というものがあるように、常温の空気中にも日常的に水蒸気という気体として水は存在しています。

ヒトの発汗、これ、実は植物が地中の水分を吸い上げる仕組みと酷似しています。植物が地中の水分を根を通じて吸い上げる仕組みは、葉の気孔から水分を蒸散させることによって生じる蒸散作用にあることが、今日では広く認識されています。

何十年か前までは、植物は毛細管現象によって地中の水分を吸い上げていると考えていましたが、毛細管現象だけでは説明をすることができず、今日では、若干の毛細管現象も関与しているが、主力としては葉の気孔から水を蒸散させることによる、蒸散作用によるものであるとしています。

エクリン汗腺発汗は抹消循環のカギ

学祖西勝造先生は、
『植物が毛細管現象を利用して水を吸い上げているように、ヒトも毛細血管の毛細管現象を抹消循環に利用している』
と、主張しました。

血液循環が、心臓(左心室)のポンプ作用で成立するという仮説は力学的には絶対に成立しない、ということを、力学(含む流体力学)が得意分野であった学祖は提唱したわけですが、成立しないのであればそれを補完する仮説が必要です。
現実に循環し続けているわけですから。

その仮説として毛細血管原動力説を提唱しました。ただ、申し上げておかねばならないのが、当時の科学常識として『植物が水を吸い上げる原理は、毛細管現象である』としていたことです。

ですから、当時の常識に基づいて提唱した仮説ということになるわけで、もし、現在、仮説を提唱するとしたら次のようなものになったことでしょう。

『血液循環は心臓のポンプ作用や筋ポンプ作用、呼吸ポンプ作用だけでは成立しない。毛細血管から血液が出るときには毛細血管床における浸透圧勾配についても、一部原動力の説明にはなるが完全には説明し切れてはいない。汗腺を中心とした体表からの蒸散があるから、血液は吸引されているのである』
といったことになるでしょう。

なお、ヒトだけにエクリン汗腺が発達した理由としては、150~190cmもあるような通常姿勢時の高低差に対し、たかだか4~6ℓの血液量で完璧に近い血液循環を行わせるため、他の哺乳類には見られない構造を持つに至ったと考えられます。