代表ブログ 017 – 育毛剤

大正製薬がテレビでコマーシャルを流している「リアップ」という育毛剤があります。多くの育毛、発毛作用を有する製品がある中で、唯一発毛効果が医学的に実証された育毛剤であるとしています。テレビコマーシャルでは俳優の水谷豊さんが登場して宣伝してます。

日本では「リアップ」という名称で販売されていますが、もともと米国では「ロゲイン」という名称で1980年代に発売されたそうで、開発したのは「アップジョン」社(その後複数回の合併によって現在はファイザー社)でしたが、ファイザー社が製造販売権を売却して、現在はジョンソン&ジョンソンの子会社である「マクニール」という会社が製造元になっているそうです。

このロゲインの成分は「ミノキシジル」という成分なのですが、当初アップジョン社では胃酸分泌抑制剤として研究開発をしていた成分であったそうです。
ところが、動物実験の途中で血圧降下作用(血管拡張作用)があることが分かり、その降圧薬としての治験実施中に明確な発毛、増毛作用があることが判明したものですから、育毛、増毛剤としても販売されることになったのだそうです。現在でも、米国では特定条件における降圧薬として使用されているそうです。

ミノキシジルの薬理作用は、毛母細胞他の特定血管に対する拡張作用あるいは毛母細胞のアポトーシス(自己死)を行わせない等の作用を有するものと考えられ、その薬理作用もほぼ解明されていますから、身体的な条件によって有効性の程度に差は生じるものの、確実に利く薬であるということになります。

私がご紹介させていただいているということは、「とても効く発毛、育毛剤だから、積極的に使用しなさい」と奨励しているわけではもちろんありません。
むしろ危険性について注意喚起をしたいのです。

リアップは『第1類医薬品』に指定されています。第1類医薬品とは、医師の処方箋なしに直接消費者が購入できる薬剤の中でも、相応の危険性を伴う可能性のある薬剤という位置付けですから、薬剤師に直接注意事項等の説明、指導を受けた上でなければ購入することはできません。
『第1類医薬品』の法律上の定義は、「副作用等によって、日常生活に支障をきたすほどの健康被害が生じるおそれがある医薬品」とされる第2類医薬品のなかから、とくに指定されたもの等が第1類に指定されます。
ミノキシジルを主成分として含有する薬品が、なぜ第1類に指定されているのかというと、指定理由が薬機法上明確に規定されているわけではありませんが、常識的に解釈すればよりいっそうの危険性が予見されるから、ということになります。
リアップを使用し続けると、心不全によって死亡するリスクが高まるのではないかといった報道が、かつて相当数流れました。現在、製品に添付されている注意書きとしても、それを警告する目的であるかどうかは定かではありませんが、高血圧症、低血圧症の治療を行っている人及び心臓、腎臓疾患のある人は使用前に医師に相談すること、となっています。

ただ、何と言っても商売ですから、実際に薬局で薬剤師さんに相談しても、そういった疾患についての有無を根掘り葉掘り尋ねられることはないようです。

ヒト頭皮は特殊な構造

薄毛は壮年期の男性であってもできれば避けたい現象ですし、ましてや若い男性や女性であれば容認し難い現象でしょう。
では、脱毛という現象がなぜ生じるのかということについて考えてみましょう。まず、頭皮というのは皮膚組織の中でも、ちょっと特殊な性質があるということがポイントの一つです。

ヒトの場合、頭皮以外の皮膚にはほとんどと言ってよいほど体毛がないようなもので、水棲哺乳類を除けば極めて特殊な皮膚構造となっています。

毛嚢数ではチンパンジーよりヒトの方が多いとした文献もありますが、これは各々の頭髪で比較した結果ではないかと思われます。
現に、私自身の腕表面側の皮膚で目視可能な太い腕毛を計測してみます、1cm2あたり8~10本に過ぎません。これが犬になると、とても厳密な計測とはいえないものの、インターネット上に公開されていた、ご自分の飼い犬(柴犬)の毛を1cm2分実際に抜いて数を数えたブログ記事があったのですが、それによると12,000本/cm2はあったとしています。
微細なアンダーコートヘアもすべてカウントされたようで、この数値はさすがに多すぎるかと思いますが、どのように解釈しても目に見えるサイズの体毛数では、ヒト体表の体毛数よりイヌの方が圧倒的に多いことは間違いありません。

一方、体中に体毛を有する哺乳類は、体表にはまったく汗腺(エクリン汗腺)を持っていません。
人類は、十分に体表を保護できる密度、ボリュームの体毛と必要な数、密度の汗腺を同時に備えることは困難であったから、より重要なエクリン汗腺を選択した結果であろうと推察されます。

精密に計測した文献は見つかりませんでしたが、ヒトの平均総体表面積が16,000cm2程度であるのに対し、総エクリン汗腺数は200万~500万とされていますから、1cm2当たりの
エクリン汗腺数はおよそ100~300個/cm2ということになります。
バラ付が大変多いということは、誰もが納得するような精密な計測が行なわれたことはないのでしょう。ほぼすべての関係者(医学者等々)は、エクリン汗腺は単なる体温調整器官であると決め込んでしまっているからです。

しかしながら、唯一とも言える例外が頭皮というわけです。頭皮だけは十分な体毛に覆われ、さらには大変発汗量も多い皮膚組織です。
どういうわけか、頭皮だけは無理してでも汗腺と毛嚢を備える必要があったからと考えられます。

頭部は保護のために体毛(頭)は絶対に必要であったし、非常に血流量の多い頭部の温度上昇を防止するために、十分な放熱能力を備える必要もあるからということであろうと思われます。
頭皮の毛細血管は、汗腺にもつながっていなければならないし、多数の毛嚢(毛孔)内の毛母組織にも十分な血流を確保する必要があるから、頭皮全体への血流量は多くしなければなりません。

その証拠に、頭皮が傷ついた場合の出血量は大変多くなります。大昔のプロレス中継、力道山やフレッド・ブラッシー(60代以上でないとまったくご存じないとは思いますが)が出場するプロレステレビ中継は、圧倒的な視聴率を稼いでいたのですが、その際放送終了時間が近づくと、必ず流血の惨事となったものです。

ブラッシーに噛まれた力道山の額(実際は生え際付近の頭皮)はぱっくり割れて、顔面は血に染まり、大量出血をしながらも伝家の宝刀「空手チョップ」で最後はブラッシーを倒し、正々堂々とフォール勝ちするという展開です。

しかし、先ほどまで命がけの殺し合いに近いような本気勝負をしていたはずの両者は、その晩の打ち上げでは一緒にビールを飲んでいたそうですし、翌日の次の興行先ではまた同じような死闘を繰り広げるといったことを日本中で繰り返していました。

頭部は出血量が大変多くなるので、傷つけて出血させれば視覚的効果は大変高いのですが、実際のダメージは見かけほどにはありません。
これがブラッシーが腕に噛み付いて同じような出血量にするため、つまり、観客、視聴者に相当な視覚的衝撃を与えるためには、そこそこの太さの動脈を傷つけなければなりませんから、ダメージが残って連日連夜の興行は不可能になってしまいます。ですから、出血させるのは頭部でなければなりません。

薄毛の原理

心因性の円形脱毛症などはまったくメカニズムは異なりますが、加齢による薄毛の進行について考えて見ましょう。
明らかに頭髪が薄くなってきた部分の頭皮は、突っ張った感じになって光沢が増しています。テカテカのはげ頭をイメージしてください。

一方、昔のマルコメ味噌のTVコマーシャルに出演していた子供のように、子供は仮に丸刈りにして剃り上げたところで、頭皮はツルツルのテカテカにはなっていません。
テカテカに突っ張っているのではなく、ブヨブヨした感じとでも言いましょうか、頭皮全体に余裕がある状態です。
青っぽくと見えると言いましょうか、まったく外形的に異なり、明らかに皮膚としての性質が異なっているとしか考えられません。

この皮膚自体の変性が、単なる加齢によるものであるとするなら、他の部分の皮膚も老化とともに、むしろツヤツヤ、テカテカで光沢が増してくるなら嬉しいのですが、他の皮膚は逆に老化によってしわが生じ、つやもなくなってしまいます。

頭皮が突っ張ってテカテカの状態になってしまうのは、単なる老化現象でも、原因不明の遺伝形質によるものではなく、明らかに本能の指令による変化、何某かのより良い結果を得るための変化であると考えるしかありません。

ここで言う「何某かのより良い結果を生むための変化」とはトータルで寿命を延ばすための、本能の指令によって生じた変化であるということです。

頭部に血流量が多いことは生理学上は常識です。一般的には脳が大量の血液を要求するからとされていますが、それだけではなく頭皮自体、つまり頭部の皮膚も前述のように他の部分の皮膚と比較して、相対的に大量の血液を流す構造となっています。

ヒトの血液量には限りがあり、同時にすべての器官、臓器に最大血流量を提供する余裕を備えてはいません。骨格筋にそこそこの仕事をさせながら、同時に消化管にも最大限の働きをさせるようなことはできないということです。

老化によって、循環系にも色々と支障、不具合が出始める、これは当然のことです。年齢を重ねるごとに基本的心肺機能が向上するということは絶対にありません。

それでも、生存率を維持するためには脳への血流を減らすわけにはいきません。もちろん主要臓器への血流量を減ずることも生存率を低下させます。

しかし、万一の事態に対する備えである、頭髪を失ったところで、もちろん確率的には生存率を低下させることにはなりますが、直接的に寿命を縮める要素とはなりませんから、まずそれ空手を付け、制限していくのが最も現実的な選択です。

テカテカのはげ頭でも、汗腺の機能は維持されます。頭皮を突っ張らせても、汗腺機能は維持し、毛母細胞への血流だけ制限して毛髪を失わせ、他の部分の重要な血流を維持、確保することが「はげ頭」の原因であると考えられるわけです。

そうなると、薬剤の力で本能の命令に従わせないようにコントロールするということは、寿命を縮める可能性があることになります。
とくに、生存率向上のために制限すべきであると、本能が変更しようとしている血流分配ををそのまま継続させようとすることは、他の循環系に負荷をかけることになりますから、心不全リスクを上げる可能性が高い、ということも言えることになります。

ミノキシジル系発毛剤を使い続けると、確かに多くの方にとって発毛、育毛作用は生じるはずであるが、一方、突然死リスクを上げてしまうという風評は、一部の方々にとっては真実である可能性が高いとは言えるのではないかと思います。

汗腺の体温調整機能以外の重要な機能については、次回、「裸療法」の解説のところで詳しく解説します。